研究課題
基盤研究(C)
本研究は,画像内に存在する複数の構成要素に対し「まとまって一つに見える(群化知覚)」という人間の知覚特性を考慮して画像パターンを認識することで有効的に機能する画像情報検索システムを開発することであり,これまでの申請者の研究成果を更に発展させ,まだ考慮できていない要因を群化領域認識に導入し,画像の検索・分類精度を向上させることを目的としている.本研究の範囲は,(1)図形内の構成要素間の「連続性」「平行性」の群化要因強度を測定するための特徴量の開発,(2)(1)の特徴量を導入した群化領域認識手法のカスタマイズと,線状や点状の構成要素が大半を占める図形商標やその他の画像に対し作成された群化パターンの精度検証,(3)類似商標検索や種々の画像解析へ(2)を応用するための技術開発,の3つとした.このうち,今年度は(1)を実施し,さらに(3)の一部を実施し,(1)の「連続性の群化要因強度を測定する特徴抽出技術」を医用画像(じん肺X線写真,胃X線二重造影像,内痔内視鏡画像)の解析に適用させた.具体的には,CR画像のじん肺X線写真の肋骨エッジを自動抽出する際,分離しているエッジを1本のエッジとして認識させる技術を開発した.また,胃X線二重造影像内の胃診断領域を自動抽出する際,同様に分離している胃診断領域のエッジを1本に認識させた.内痔内視鏡画像の解析においては,異常症例の画像内に存在するうっ血領域をオブジェクトとして認識させる際にうっ血領域を群化領域とみなして領域を精度よく抽出する方法を提案した.さらに,(1)の「平行性の群化要因強度を測定する特徴抽出技術」を開発し,胃X線二重造影像を用いた画像診断システムに適用した.これは胃X線像の診断領域内に存在するひだを抽出した後,ひだの平行性を測定する特徴抽出を行い,健常・異常に自動判別するものであり,判別率90%以上の高精度な判別結果を得た.
2: おおむね順調に進展している
研究範囲(1)~(3)のうち,(1)で開発した技術を(3)を実施し医用画像処理に関するいくつかの研究で成果を得たことから,(1)と(3)は概ね研究計画の予定通りに遂行されていることが伺える.しかし,(1)の開発技術は画像の種類に依存している可能性があり,今後,2値の図形商標を用いて抽象的な画像でも適用可能であるかを評価する必要がある.より一般的なモデルを作成するために,抽象図形を用いて意図する群化領域の認識精度が高くないときは原因を追究しカスタマイズする.研究範囲(2)については,次年度より実施する計画であり,当初の予定通りである.研究範囲(3)については,(1)で得た技術の精度を評価するためにあえて今年度でも実施した.研究範囲(1)と(3)は独立して考えるべきでなく,(1)で得た技術を評価するためには不可欠な研究内容である.
今後の研究の推進方策は,まず,研究範囲(2)である「「平行性」「連続性」の特徴量を導入した群化領域認識手法のカスタマイズと,線状や点状の構成要素が大半を占める図形商標やその他の画像に対し作成された群化パターンの精度検証」を実施する.また,(1)で得た技術を2値の抽象的な図形商標に適用させ,提案手法が画像の種類に依存するかどうかを評価する.さらに「大域的領域」を観察して知覚される群化領域認識手法を提案する.これは研究範囲(2)の一部であり,申請者は,この認識手法を開発した後,魚の養殖において役に立つ「水槽内の魚群認識」に応用する予定である.
国際会議や論文誌に数件投稿したが採録されなかった.国際会議への参加費・海外旅費,および論文別刷代に使用する.また,提案手法のさまざまな社会システムへの適用可能性を評価する際に生じる実験用PCの購入に使用する可能性がある.
すべて 2013 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (9件)
Automation, Control and Intelligent Systems
巻: vol.1, no.2 ページ: 24-33
10.11648/j.acis.20130102.12
電子情報通信学会論文誌D
巻: vol.J96-D, no.11 ページ: 2804-2814
Proc. of the 11th Australasian Data Mining Conference
巻: 無し ページ: paper no.1-1
巻: 無し ページ: paper no.1-2