人間の主観に準じた類似画像検索システムの性能を向上させるため、本研究では以下の機能を実現させた。本研究で提案した群化領域認識手法を類似商標検索システムの機能として導入し、かつ、種々の画像を対象にした画像情報検索システムや画像特徴の抽出手法への適用可能性も調査した。 (1) 抽象図形を対象に、ゲシュタルト心理学で明らかにされている図形の群化要因「よい連続性」を測定するモデルを提案した。これまでは、近接、類同、閉合、の群化要因を測定するモデルを提案しており、よい連続性のモデル作成では、これら3つのモデルも取り入れられた。前者3要因に対するモデル化は図形内の局所的な領域に対し群化するか否かの判別を行っていたが、よい連続要因のモデルは図形全体に対し群化するか否かの判別を行うものであり、大局的に群化領域を認識するモデルとなった。また、当検討内容は以前にも提案したが局所領域を観察していくものであった。しかし、視覚心理学の立場からこの要員をモデル化するには大局的に図形を観察する必要があり、本研究では、以前に作成した手法をカスタマイズした。 (2) 胃X線像(白黒濃淡画像)を用いた胃がん診断支援システムや内視鏡画像(カラー画像)を用いた内痔画像診断システムを構築することを目的として、異常領域を特定する手段に(1)を含めた群化領域認識手法が適用できるかを検討し、胃X線像では胃壁のしわパターンや胃輪郭線の抽出、内痔内視鏡画像ではうっ血領域の特定に提案手法が有効に機能することが示唆された。 (3) Webカメラを用いて人間がVDT作業を行っているかを判別するシステムを開発した。Webカメラで録画された映像から判別に用いる画像特徴量を抽出する際、(1)を含めた群化領域認識手法の一部を用いて行った。高い判別率を得られたことから、本システムへの群化領域認識手法の導入は有効であることが示された。
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