本研究の目的は,第二言語の習得にあたって生じる困難を克服するための方法を,認知・知覚メカニズムの側面から導き,学習者へ提供することである。より具体的には,第二言語として日本語,学習者の母語として韓国語,中国語と英語を想定し,音声の時間的要素に絞って,母語話者の知覚過程を模擬する計算機アルゴリズムを構築し,学習すべき時間要素を取り出して学習者に提示する枠組みを提供する。特に,日本語の中での出現頻度が高いにもかかわらず,非母語話者にとって一般に習得が困難である促音・長音などの特殊拍を対象とする。下記の3つの要素課題のもとに研究を実施する:(1)母語話者モデルの構築,(2)非母語話者向け表現形式の調査,(3)モデルの実証。 平成29年度は,学習者の母語として中国語を対象に加えた。中国語は当初計画で予定していなかった言語であるが,その母語話者における日本語学習者数が近年急速に増加したため加えることとなった。首記対象言語に対して要素課題2の非母語話者向け調査と要素課題3のモデルの実証を実施した。以上の成果をまとめて論文として公表した。要素課題1は前年度までに終了していた。また,前年度に実施したデータベースの構成要素の再定義にしたがってデータベースの仕様を見直し,残余リソースをデータベースの再構築に集中的に配分することにより,期間内に作業を終了させた。これにより,当初計画にあったデータベースの整備も完了したことになる。
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