研究課題/領域番号 |
25330229
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
田中 貴紘 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80451988)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ユーザ状態推定 / 割り込み / HCI / HAI / ヒューマンインタフェース |
研究概要 |
先行研究にて提案した,PC作業履歴の基づくPC作業時割り込み拒否度推定法は,非PC作業の混在により,推定精度が大きく低下する問題があった.また,非PC作業中の頭部運動と作業中の拒否度の関係が指摘されていた.そこで,本年度は,PC作業履歴と頭部運動を反映した,割り込み拒否度推定法の検討を行った. (1)作業中の頭部運動のうち,前傾姿勢,前傾継続率,後退運動,Pitch上方回転の4つと拒否度との相関を確認した.さらに,統計的分析に基づき,拒否度を反映する4種類の頭部指標を提案した.(2)これまで頭部運動の取得に,高精度の3次元モーションキャプチャシステムを用いていたが,実環境での使用は現実的ではなかった.そこで,市販のWebカメラとfaceAPI(SeeingMachines社製)の顔認識エンジンを用いて,一般的なデスクトップPC環境にて簡便に頭部運動を取得する機能を実装した.(3)上記(1)と(2)を,PC作業時割り込み拒否度推定法へ適用し,PC操作履歴と頭部運動を考慮した,デスクワーク時割り込み拒否度推定法を提案し,評価実験(被験者20名)を行った.実験により,非PC作業時だけでなく,PC作業時の推定精度(特に再現率)が大きく改善した.(4)(3)にて提案した割り込み拒否度推定アルゴリズムを組み込んだ,割り込み拒否度推定エンジンを開発し,他のシステムからの利用を可能とした.(5)頭部運動と割り込み拒否度の関係を認知科学的視点から分析し,Resumption Lag(作業復帰時間)との関係を明らかにした.分析により,頭部運動が作業者の内的状態(集中度合,モチベーションなど)を表す可能性を示した.(6)共生エージェントのプロトタイプの一つである秘書エージェントに,(4)で開発した推定エンジンの組み込みを行った.さらに,自動車への共生エージェントの組み込みを試み,プロトタイプの試作を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
PC操作履歴と頭部運動を考慮した,デスクワーク時割り込み拒否度推定法を提案し,PC作業時と非PC作業時の推定精度の改善を確認した.また,推定法に関し,国際ジャーナルへの投稿を行っている(暫定採録判定).さらに,推定アルゴリズムを組み込んだ,割り込み拒否度推定エンジンを実現した.当推定エンジンをCEATEC Japan 2013にて展示し,展示内容が日経産業新聞に掲載された. また,開発した推定エンジンを組み込んだ秘書エージェントは,The First International Conference on Human-Agent Interactionにて Best Poster Presentationを受賞し,自動車への共生エージェントへの組み込みの試みは,日本知能情報ファジィ学会 第2回HSS人間共生システムデザインコンテスト2014にて優秀賞を受賞した.
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今後の研究の推進方策 |
開発したデスクワーク時割り込み拒否度推定機能等を持つ情報エージェントを実装する. (1)情報エージェントをサーバ・クライアントモデルのシステムとし,周辺情報収集に向けたシステムの試作を行う.室員のPCに拒否度推定エンジンを実装したクライアントをインストールし,別途用意するエージェントサーバとの通信を行う機能を実現する.(2)エージェントサーバを開発し,各室員の拒否度の集約を行えるようにする.また,室内に別途設置する,深度センサやマイク,カメラ等のセンサ情報も集約可能となるよう目指す.(3)エージェントが,室員の拒否度を元に,各室員へ話し掛けるなどのインタラクションを行えるよう,室内(クライアント間)移動機能の実装を行う.(4)エージェントが矛盾なく各PC間を移動したり,室内のある個所に滞在したりする状態を,室員が視覚的に認識できるよう,移動・表示制御機能をサーバへ追加する.
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