まず,先行研究にて提案されていた,PC作業履歴に基づくPC作業中の割り込み拒否度推定法に,作業者の頭部運動を反映させた,デスクワーク時割り込み拒否度推定法を提案した.作業中の頭部運動分析に基づき,頭部Pitch回転,頭部前後移動を推定指標として抽出し推定式に組み込むことで,PC作業中の拒否度推定の精度が10~15%向上した.また,これまで推定が困難であった,PC外作業時の推定精度を向上させ,特に再現率を30%以上向上させた.本提案手法により,PC作業・PC外作業を含むデスクワーク全般を対象とした割り込み拒否度推定法を実現した.また,頭部運動と割り込み拒否度の関係を認知科学的視点から分析し,作業復帰時間との関係を明らかにした.分析の結果,頭部運動が作業者の内部状態(集中度合,モチベーション等)を表す可能性を示した.次に,上記推定法を,単眼カメラによる顔認識と組み合わせ,PC上で動作する割り込み拒否度推定エンジンを開発した.室員とインタラクションを行う情報エージェントは,作業者のPC間をネットワークを介して移動する.前述の推定アルゴリズムを搭載し,低拒否度の作業者PCへ優先的に移動するルールを設定した.エージェントの動きに対する人の感じる雰囲気分析では,うなづき等の傾聴行動やそれ以外の行動のタイミング,頻度,ばらつきによって,感じる雰囲気が変化すると示唆された.また,情報エージェントは,存在理由としての役割が与えられた上で,非従事時の振る舞いが受け入れられ,また,印象が変化する可能性が検討された.さらに,本研究の応用例として,高齢ドライバの運転支援を目的とする同乗エージェントを試作し,ドライバに与える印象を分析した.分析の結果,運転やエージェントに対する好意的反応が得られたが,個々人の運転スタイルへの適用が必要であることも示唆され,今後の展開を検討している.
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