本研究は,無意識に発現する行動である「癖」を対象に,その癖の矯正促進のための情報提示手法として,「癖の長期的な影響を連想させる情報提示手法」を開発した.研究代表者が以前開発した「癖発言通知手法」と本研究で開発した手法を連携させることで,癖発現の気づき支援から癖矯正支援を実現した. 対象とした癖は,VDT(Visual Display Terminals)作業時における姿勢悪化とし,行動分析学における行動随伴性を用いて,姿勢矯正促進を目指した.「癖の長期的な影響を連想させる情報提示手法」として,姿勢悪化による視覚疲労を擬似的に体験させることで実現した.この疑似体験は,行動随伴性の「嫌子(視覚的疲労)出現による行動弱化(悪姿勢を減らす)」に対応し,この行動随伴性によって矯正行動を促進させた.疑似的な視覚的疲労としては,ディスプレイ表示に,ガウシアンフィルタを用いてディストーション(ほやけ表示)を発生させ,姿勢悪化度合いに応じてディストーションを強める.姿勢が改善されるほどディストーションを弱め,適切な姿勢状態を促すようにする.これらの機能を実現したVDT作業用姿勢矯正促進システムを開発した.開発した提示手法の効果について,実験タスクへの集中度,ディストーションの効果および姿勢矯正度に関して検証した.その結果,開発した手法が,悪姿勢の矯正行動支援に効果があることがわかった. 特に,平成27年度は,平成26年度に開発した提示手法のアルゴリズムをデスクトップ型の実験システムを用いて,その有効性を検証した.光トポグラフィによる脳活動計測によって実験用タスクへの集中度および提示情報への認識度を検証し,ユーザの実験中の行動ログ解析により矯正行動促進を検証した.それらについて,実験システムで効果があることが分かった.
|