研究課題/領域番号 |
25330236
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
中島 誠 大分大学, 工学部, 教授 (00253774)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | アプリケーション多態化 / クラウドソーシング / 協調作業支援 / アプリケーション共有 |
研究概要 |
当該研究はネットワーク上の知的労働力を活用する次世代クラウドソーシング環境の整備を目指し,日常的に利用されるアプリケーションを多態化させて,マルチユーザ化するためのソフトウェア開発基盤(多態化基盤と呼ぶ)の実現を目的とする.本年度は,以下の成果を挙げた. (1)多態化基盤の定式化について:アプリケーションを,ネットワークを介したマルチユーザ版へと多態化させるため,HTML5を中心としたWeb技術を導入し,Webブラウザを介して共有する仕組みを実現した.特に,通常の利用時と同様に,ユーザのドラッグアンドドロップによるデータ転送が共有しているアプリケーションに対しても可能なように,ウィンドウのイメージ情報とイベント情報をコントロールする機能を構造化し,実現した. (2)アドオンコンポーネントのためのインタフェースの定式化:特定のソフトウェア(ソフトウェアキーボード)の多態化を通じて定式化を行った.ソフトウェアキーボードを,Webブラウザを介して利用できるよう多態化することで,タブレットPCやスマートフォンのようなタッチパネルディスプレイを用いた携帯情報端末からのデータ入力が可能になる.ソフトウェアキーボードに,アドオンコンポーネントを追加し,実際に多態化を行う課程で,多態化に必要なコンポーネントのアドオンポイントを明確にし,アドオンコンポーネント作成方法を整理した. (3)上記1については,当該研究機関の研究室での検証を終え,その成果を情報処理学会 第76回全国大会にて発表した.また,2については,多態化の効率についてのデータを精査しているところである.多態化したソフトウェアキーボードについては,データ入力を業務としている外部の被験者を対象にした予備実験を行った.今後,デザイン等の修正を加えながら,長期的な利用下での評価を行い,成果を発表する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度に予定した3つについて,以下のとおり概ね遂行できた. 1.多態化基盤の定式化については,その仕組みの勘案とともに,具体的に多態化を行うことで,概ね当初予定の通りに進めることができた. 2.多態化するためのアドオンコンポーネントのためのインタフェースの定式化については,特定のアプリケーションを多態化することで,必要なアドオンの作成と合わせて達成した.構造化した機能と合わせて多態化に必要なコストについても,時間と工程の両面からの評価が進んでいる. 3.アプリケーションを多態化して共有する際の,著作権およびライセンス契約に関する問題については,判例などの検証をすすめている段階でありが,アプリケーションを使い易くするためであれば,問題ないと考えている.ただし,今後も専門家へのヒアリングも含めてより深く検証する予定でいる.
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今後の研究の推進方策 |
前年度までの成果をもとに,多態化の評価と問題点の洗い出し,および改善を行う.特に,タブレットPCやスマートフォンのように,普及した多点認識可能なタッチパネルを利用できるアプリケーションへの多態化は,提唱する次世代クラウドソーシングの実現に必須かつ,多態化基盤の有効性を諮る上で重要と考え,これらへの対応の可否を調べる.さらに,実際のアプリケーションの多態化として,大分大学学術情報拠点図書館でのアクティブラーニングを支援する科目別学習支援ブースやラーニング・コモンズで利用するアプリケーションの多態化を手掛ける.これまで,科研費(基盤研究(C)平成21年度~23年度)の補助を受けた研究において,図書館職員との連携には実績があり,その延長として計画と研究体制は十分に整っている.図書館職員の示唆を取り入れながらの多態化を通じて評価を行う.さらに,整備した多態化基盤のWebを介した公開準備も進める.
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次年度の研究費の使用計画 |
まず,当該年度で購入した物品(高速演算サーバーおよびソフトウェア),および国内学会への出張旅費が想定を下回った.また,謝金については,アプリケーションの多態化についてのユーザスタディのため,実験補助を依頼する大学院生のために計上していたが,当該年度は,多態化基盤の有効性を明確にするために,それを使ったアプリケーション開発を優先すべきと判断し,次年度以降にユーザスタディを実施することにしたためである. 物品費,および学会への出張旅費の次年度使用額は,平成26年度分と合わせて使用する.謝金の次年度使用額は,アプリケーションの多態化についてのユーザスタディのため使用するが,一部はタブレット端末を予定より拡充して購入する物品費に充てることで,大分大学学術情報拠点図書館での学習支援システムを利用した実験をより広く実施する予定である.
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