これまでの研究補助期間に構築したアプリケーションの多態化基盤の有効性をより広く確かめるために,H27年度に新たに見つけた課題への対応を行った. (1)複数人での同時操作を想定していない通常のアプリケーションを同時操作できるように多態化できる仕組みを利用し,多点認識可能な赤外線方式のタッチパネル上で,複数ユーザがスムーズに操作できる環境の実現を目指した。ユーザが許容できる程度にアプリケーションの操作感を維持しつつ,複数ユーザが発生させる多数のイベントを省略する冗長イベントフィルタと,タッチパネル利用時に,ユーザの意図しない動作を引き起こすイベント(ノイズイベントと呼ぶ)を除去するノイズイベントフィルタを実装した。被験者実験でノイズイベントフィルタの有効性が明らかになり,冗長イベントフィルタによるイベントの省略においては,よりクイックな動作をアプリケーションにさせられるようにイベントの省略数は予想より多くてもよいことが分かった。 (2)平成27年度に,アプリケーションの多態化基盤を利用して既存のWebブラウザに新たな機能を付加することで構築した拡張ウェブブラウザを用いて,新しいトランスクルージョンの仕組みを確立し,ユーザインタフェース関連の国際会議や国内大会にて成果発表を行った。 (3)タブレット端末からPCを操作し,任意のアプリケーションにデータ入力を行えるインタフェースシステムの普及版を改良した上で,東京ならびに大阪にて就労経験のある障がい者の方々をモニタとして,そのインタフェースデザインの評価を行った。カスタマイズが容易な仕組みについての有効性を確認し,そこでの知見を論文としてまとめる目途をつけた。システムは,地域企業と協力して,商品化に向けた整備を進めている。なお,当システムの仕組みについては,平成28年度に特許を取得した。
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