研究課題/領域番号 |
25330238
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
西内 信之 首都大学東京, システムデザイン研究科, 准教授 (70301588)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ユーザビリティ / 画像処理 |
研究概要 |
本研究は、評価対象となるインタフェースを使用しているときのユーザの手の動きに着目して、これを解析することで客観的・定量的な観点からのユーザビリティ評価を行う新たな手法を提案するものである。具体的には、機器を使用している際のユーザの手の動きをCCDカメラで撮影し、画像処理により手の動きを抽出し、手の停留時間、軌跡、移動速度、左右の動きの切り返しなどの手の動きのパラメータと、対象とするインタフェースのユーザビリティの関係を明らかにする。 平成25年度は、ユーザビリティ、ユーザエクスペリエンス、ヒューマンインタフェース、画像処理に関する様々な研究を調査し、本研究テーマに関連する最新技術を修得し、また、本研究テーマの社会的重要性を再確認した。実験システムの構築については、手の動きを計測するカメラの設置位置、設置角度、設置台数について検討を行い、実験システムを構築した。また、被験者の手の動きに対して、人間工学分野で用いられている動作分析を適用することについては、次年度から実施する注視点解析との組み合せを検討してからのほうが効果的であると判断し、先に注視点解析との組み合わせについて検討を行った。更に、本研究テーマに関連する、操作動作が極めて少ないケースのバイオメトリクス(生体認証システム)のユーザビリティ評価、および、ユーザビリティの満足度と密接に関連するユーザエクスペリエンスの客観的・定量的評価の研究を実施し、国内学会での発表を行った。これらの研究から、本研究を推進していく上での今後の重要な示唆を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25度実施予定であった研究計画は、(Step1)対象のインタフェース操作時のユーザの手の動きを計測する実験システムの構築、(Step2)人間工学分野で用いられている動作分析の適用の検討、であった。 (Step1)の実験システムの構築については、本年度にシステムの具体的な仕様を検討し、システムを構築することができ、達成度は良好であった。(Step2)の人間工学分野で用いられている動作分析の適用の検討については、次年度行うことが効果的であると判断し、次年度に実施予定であった(Step4)の本提案手法と注視点解析との組み合せを先に本年度に検討した。これは、動作分析(サーブリック分析)の動素として、例えば、「押す」、「回す」、「つかむ」、「調べる」、「さがす」、「見出す」、「選ぶ」、「考える」などが挙げられ、これらの動素が眼球運動との関連性が極めて高いことから、そのように判断した。一部の研究計画に若干の変更が生じたが、全体の達成度は良好であるといえる。 更に今年度は、今後、具体的な実験を実施する注視点解析に加えて、生理的なデータである脳波の測定によるユーザビリティ評価の検討も実施することができたため、次年度以降の研究をより円滑に推進することができると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまで、ユーザビリティを定量的な観点から評価する手法については、初心者と熟練者の各操作ステップの操作時間の比(NE比)(NEM:Novice Expert ratio Method)を用いる手法が代表的である。この手法は、定量的な観点からのユーザビリティ評価として有効な手法であるが、初心者と熟練者の操作で違いのある部分のみの抽出に留まっており、なぜそこにユーザビリティの問題が潜んでいるかという具体的な特定ができない、という問題がある。 今後、本研究で提案している手の動きによるユーザビリティ評価手法に加えて、人間の生理的なデータである眼球運動、および脳波を測定することで、第3の観点から本提案手法を評価することができ、またより詳細なユーザビリティの問題点の発見につながると考えている。具体的には、注視点解析と脳波測定により得られるそれぞれのデータと本提案手法で得られる手の動きのデータの関係や特徴を明らかにし、それぞれの手法を組み合わせることで、これまでの単体の評価手法だけでは見出せなかったユーザビリティの問題発見の可能性を検討する。本提案手法の手の動きのパラメータについても、前述の生理データと比較しながら動作分析の要素、従来のNE比の考え方も加味して決定していく。
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