研究課題/領域番号 |
25330240
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研究機関 | 高知工科大学 |
研究代表者 |
星野 孝総 高知工科大学, 工学部, 准教授 (10351321)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | リハビリテーション / 認知運動療法 / fMRI / 脳機能計測 / タッチパネルシステム / 空間操作 / 賦活影響 / 認知フィードバック |
研究実績の概要 |
リハビリテーションにおける認知運動療法を行うためのシステム開発を行ってきた。また、昨年度は、四肢運動から指運動のリハビリが必要な被験者のリハビリ課題実験に再設定し、実験を行った。その麻痺からの復帰の軌跡をデータとして習得し、さらに実験にも参加してもらった。その結果を受けて、システムの改良とfMRIでの脳機能計測検証もおこなった。従来実験で用いていたセンサー形では接触反応を用いていた。また、本研究室で実験に用いている大型タッチパネルシステムでは、人間がパネルにタッチする直前に非接触で反応する。今までの課題では、接触することで接触感覚のフィードバックがリハビリに効果的であることを実験的に確認してきた。そこで、簡単な接触感を伴ったインタフェースと伴わないインタフェースを作成し、fMRIによる脳機能の差と影響の違いを調査した。また、同時に空間操作だけのリハビリテーションインタフェースも実験的に構築し、その有効性も検証した。脳機能においては、特に課題の習得速度に着目した検証を行い、他者からの補助や援助を充実させたタスク実験(社会学習的タスク実験)と試行錯誤的な操作によりリハビリ動作を獲得するタスク実験(個体学習的タスク実験)を実施し細かな検証をおこなった。脳機能の側面からリハビリを考え、脳機能の賦活度合を想定した場合、触覚フィードバックはさほどの影響を及ぼさず、非接触により試行錯誤を繰り返す方が賦活影響が大きいことが示された。しかし、これは被験者の疲労と視覚的なフィードバックが得られないことから被験者の負担が大きく継続が困難である。そこで、他者からの補助や援助が適度に混ざり合っている場合に継続して認知運動療法を継続できることが示された。その適度な認知フィードバックが援助の役割を果たし、継続的な脳賦活を起こしていると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題当初では、システムのプロトタイプをリハビリが必要な対象者に試してもらう予定であった。しかし、四肢運動が必要な人がなかなか見つからず、指運動リハビリとなった。認知運動療法を行うシステムとして指運動とした場合、指運動の認知・触覚のフィードバックが必要であると考え、それらの実験系をfMRI内で実験できるように再度構築して実験を実施した。当初の方向とは少し変わったものの、当初の目的とほぼ同じような方向で進んだと理解している。また、手運動でのリハビリについても空間操作インタフェースシステムの試作も進めることができたため、おおむね実験としては進展しているといえる。次に研究成果の発表についても多くの国際会議と国内シンポジウムで発表し、多くの研究者との交流や意見交換ができた。多くの助言ももらい更なる発展が期待できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年は、取りまとめの年度として、国際学会発表、論文執筆に多くの時間をかける予定である。また、引き続きの空間操作のシステム開発実験とfMRIによるタスク実験を行い検証していく。また、近年性能が向上しているLEDを用いて、近赤外線分光装置(NIRS)の開発も進めている。この装置では光を照射して酸素化ヘモグロビンと脱酸素化ヘモグロビンの変化量を計測できる装置であり、従来ではレーザー光が使用されていた。本研究室ではfMRIと同時計測可能な機器として開発しており、fMRIが使用できない状態でのリハビリ状況でも脳機能を部分的に計測可能にするための技術開発に着手している。fMRIでは閉塞感があり、一般のリハビリインタフェースとは異なる。そこで、脳波計と組み合わせることにより、一般のリハビリテーション時の細かな脳機能センシングを可能にする技術となると考えている。
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