研究課題/領域番号 |
25330244
|
研究機関 | 神奈川工科大学 |
研究代表者 |
谷中 一寿 神奈川工科大学, 情報学部, 教授 (30298278)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 裸眼立体表示 / ミクストリアリティ / インテグラルフォトグラフィ |
研究実績の概要 |
ミクストリアリティにおいて特殊なメガネなしで現実空間と仮想空間とを重ね合わせるための立体表示方式としては、横だけでなく縦方向にも視差を生ずるインテグラルフォトグラフィ(IP)方式が望ましい。仮想空間と現実空間の重なる領域を増やすには、大きな飛出し量が必要であり、ディスプレイから遠くても光線の密度を高く保つ必要があるので、高精細なディスプレイと、焦点距離が長いフライアイレンズを組み合わせる必要がある。 そこで非常に高精細な液晶ディスプレイ(対角9.7インチ、2,048 x 1,536画素、264 ppi)を搭載したタブレットPC(iPad Retinaディスプレイモデル)を用いたIP技術とそのメディアアートへの応用を平成26年4月のLaval Virtualで発表した。また、AndroidタブレットPCの画面にフライアイレンズを重ねることで、盤やボールが裸眼立体表示されるピンボールのようなシステムを、MHCI'14で発表した。 また、プロジェクション型のIPは大画面化に適した方式だが、従来は1視点ごとに1台のプロジェクタが必要とされたので大規模で高価であった。そこで、1枚のフライアイレンズと1台のプロジェクタでできるシンプルで安価な方式を提案し、平成26年8月のSIGGRAPH 2014で発表した。 また、IPの飛び出し量を増やすにはフライアイレンズを構成する微小な凸レンズの焦点距離を長くすることによってレンズから離れた位置でも光線の密度を高く保つことが有効であるが、そのようなフライアイレンズを安価に試作することが困難であることは、前年度までの研究でわかっていた。前年度に、フライアイレンズを、屈折率が空気とレンズ素材との中間であるような液体(たとえば水)に浸すことで、等価的な焦点距離を伸ばすことができる方法をすでに開発していたが、今年度は、そのような新しいIP技術とそのアート作品への応用を、平成27年3月のIEEE Virtual Reality 2015において研究デモとして展示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書では、研究の目的として、ミクストリアリティの利用者の負担を減らすため、裸眼立体表示を用いることができるようにすることを挙げている。この場合、裸眼立体表示は3Dメガネ式に比べ飛出し量が小さいので、実空間と仮想空間が重なり合う領域を大きくするため、飛出し量の増大が求められている。そして平成26年度以降の計画としては次の3項目が挙がっている。 ①実写の場合のレンズの歪の補正 ②超解像技術の導入による解像度のさらなる向上 ③裸眼3Dディスプレイを用いた仮想現実システムの構築 このうち①②は、ソフトウェアにより画質向上を図る方法であるが、それとは別により高精細なビデオカメラや液晶ディスプレイを使うことによるハードウェアによる方法がある。後者のほうが喫緊の課題であると考えてそちらを優先した。すなわち、従来はHDTV程度のビデオカメラと、それをやや上回る解像度のRetinaディスプレイを主として用いていたが、今後はそれに加え4Kのビデオカメラと4Kの液晶ディスプレイも用いることとした。③については、現段階では水平方向にのみ視差を生ずるレンチキュラー方式を用いてはいるものの、Leap Motionという手指に特化したジェスチャー入力デバイスと組み合わせて、裸眼立体表示されたチェスの駒を指でつまんで動かすシステムを開発した。この成果は平成27年8月のHCI International 2015で発表予定である。以上述べたように、研究方針は交付申請書の記載内容から多少変わった部分もあるが、裸眼ミクストリアリティという研究目的は変わっておらず、しかも「研究業績の概要」で述べたようにプロジェクション型など予想外の成果も得られていることを考え合わせれば、おおむね順調に推移していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
平成27年度は本研究の最終年度である。 裸眼立体表示については、引き続き、飛出し量を増やすための検討を進める予定である。そのためには、入手可能なうちで最も高解像度の液晶ディスプレイを用い、かつフライアイレンズを水(または他の液体)に浸す方法を検討する予定である。 ミクストリアリティについては、すでにレンチキュラー方式の裸眼立体表示とLeap Motionとを組み合わせたシステムはできているので、今後、レンチキュラー方式をIP方式に変更できないか検討する。またIP画像を実時間合成するには莫大な処理量が必要になると思われるので、GPUを活用できないか検討する。 また、今までの成果を、可能な限り来年3月末までに査読付きの国際会議で発表したいと考えている。そのためには、できれば10月、遅くとも12月までに投稿する必要があるので、早めに成果をまとめるよう努力したい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度が最終年度なので、最終年度配分額と合わせて、残された研究課題を遂行するために必要な物品等の購入や、今までの成果を学会発表するための経費として執行したほうが、基金化の趣旨に合致していると考えたため、次年度使用額が生じることになった。
|
次年度使用額の使用計画 |
残された研究課題を遂行するための物品等を必要に応じ購入する。また今までの成果が8月にロサンゼルスで開催される2つの国際会議(HCI International 2015とSIGGRAPH)に既に採択されており、それ以降の国際会議にも投稿する予定なので、それらの経費として使用する予定である。
|