研究課題/領域番号 |
25330259
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
尾関 基行 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 助教 (10402744)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 存在感の演出 / 意思決定 |
研究実績の概要 |
ユーザの主体感覚を乖離させ、それをモノや架空の存在に帰属させることで、その「何かしら」に意図性や存在感を与える研究を実施した。申請書に記したテーマに完全に沿った研究と、そこから派生した研究の2本立てで進めている。2年目となる当該年度は、初年度に構築した2つのシステム(主体感覚の乖離と帰属による意思決定システム、及び、書き置き風メッセージによる存在感の演出)をそれぞれ改良し、追実験を行った。 意思推定システムは、ユーザからの入力をカメラ(画像)から傾きセンサに変更し、同様の結果が得られることを確認した。ユーザはスマートフォンに2つの間で迷っている事項(選択肢)を入力し、スマートフォンを両手の指で水平に持って固定する。スマートフォンの画面には2つの選択肢が左右に描画され、傾きを察知して動くエージェントが中心にいる。ユーザはスマートフォンを動かないように持っているのでエージェントが動くはずはないが、ユーザの微弱な不覚筋動を傾きセンサが読み取って、エージェントはいずれかの選択肢の方向へ動く。ユーザの不覚筋動やその動きへの反射にはユーザの隠れた期待が関係しているため、エージェントの選択(意思決定)はユーザにとって満足いくものとなる。入力情報やデバイスは初年度から変更したが、初年度と同じく、仮説が正しいことを示唆する結果が得られた。 書き置き風メッセージの研究は、ユーザが朝や就寝前に自分でタイマー設定した家電の処理(ユーザが不在もしくは就寝中に処理が終わる)に対して、「◯◯をやっておいたよ」といった言い回しでメッセージを残しておくことによって、自分の知らない間に誰かが存在して作業しておいてくれたような錯覚を与えるというアイデアである。当該年度は、初年度の研究発表で指摘された言い回しのバリエーションについて主観評価実験を行い、どのような言い回しが最も寂しさを和らげるかを検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画書に記述した2年目の目的は「入力デバイスを変更して1年目のシステムと同様の結果が得られることを確認する」というものであり、当該年度はその計画どおり、ユーザからの入力をカメラ(画像)から傾きセンサに変更し、同様の結果が得られることを確認した。提案手法がスマートフォンでも有効であることを確認したことにより、本技術の応用可能性を示すことができた。 また、並行して行っている書き置き風メッセージの研究も、言い回しのバリエーションについて主観評価実験を行い、どのような言い回しが最も寂しさを和らげるかを検討するなど、順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画書では、さらに入力方法を変更し、提案手法の有効性を示していくことを述べていた。その計画も実施する予定であるが、視線検出装置を利用できる環境が整ったため、これまでのシステムにおいてユーザの視線がどのような振る舞いを見せているかについて詳細に調べ、主体感覚の乖離や帰属との関係を調べていく。また、書き置き風メッセージについても、ビーコンなどの電子機器の扱いが容易になってきたため、人の行動に応じてメッセージを残すシステムを開発し、より意図性を感じさせる手法を検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度途中に申請者の大学の移動が確定し、移動先での研究環境を整えるために繰り越した(一部、移管できない機器を研究に使用していたため)。
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次年度使用額の使用計画 |
実験プログラム開発用の計算機の購入に使用。
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