研究課題/領域番号 |
25330260
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
岡 夏樹 京都工芸繊維大学, その他部局等, 教授 (20362585)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ヒューマン‐エージェント・インタラクション / 機械学習 / 意味獲得 / モジュール / 認知科学 / 知能ロボティクス / 人工知能 / 認知発達 |
研究実績の概要 |
引き続き、以下の通り、モジュール組換え型学習システムの研究開発を進めた。 1.発話の意味獲得の計算モデルの研究開発 前年度までに、内容語とその意味(指示対象)の対応をモジュールで学習しつつ、機能語に従ってモジュールの組合せ方を学習することにより、発話の意味に沿った動作や内部処理を行うことができるロボットを用いて、人とのインタラクション実験を行い、人の幼児と同様、ロボットが肯定バイアスを示すことを示した。本年度は、被験者数を倍増した実験を実施し、結果を詳細に分析し、肯定バイアスの成因として、実験参加者が持つ性質(「no 発話」が無いか少ないこと)と、ロボットの内部処理機構が持つ性質(複数の学習が並行して進むことから生まれる偏り) の2 つがあることを明らかにした。これは、インタラクションを通した学習におけるモジュール組換え型学習システムの本質的な特徴を明らかにした重要な成果である。この他に、モジュール組換え型学習システムを用いた内部表象の獲得実験や見立ての成立過程のシミュレーションも試みた。 2.中長期インタラクションを可能にする技術の開発 相手からの働きかけへの応答だけでなく、インタラクションを主導する行動が可能になる計算モデルの開発を目指して、内発的動機づけの実装方法を検討した。報酬予測誤差や行動予測誤差の変化を内部報酬とするモデルを提案した。この内部報酬は、新しいできごとへの好奇心と、慣れ親しんだもの(親近性のあるもの、学習進行中のもの)への関心をモデル化したもので、予測できないものごとや、逆に、完全に予測通りのものへの飽きを表現可能とした。この他に、無意識な行動からの相手の選好の推定方法、表情からの相手の興味関心の推定方法を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.発話の意味獲得の計算モデルの研究開発 本研究の主要ターゲットであるモジュール組換え型学習システムの、人とのインタラクション状況における基本的な性質を明らかにすることができたため、次年度に予定している中長期のインタラクション実験の見通しがよくなったから。 2.中長期インタラクションを可能にする技術の開発 内発的動機づけの設計方針が固まったため。この内発的動機づけを利用すると、相手からの働きかけへの応答だけでなく、インタラクションを主導する行動が可能になると考えており、この応答/主導を的確に切替えることは、中長期インタラクションを可能にするための有望な手段であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、モジュール組換え型学習システムをターゲットとして、次の3項目の研究開発を行う。 1.発話の意味獲得の計算モデルの研究開発については、肯定バイアスとは逆方向のバイアスも生じうるようにモデルを拡張するなど、モデルの適用範囲を拡大する。 2.中長期インタラクションを可能にする技術の開発については、相手からの働きかけへの応答だけでなく、インタラクションを主導する行動が可能になる計算モデルを開発することにより、中長期インタラクションを可能にする。 3.以上を統合し、今何を学習すべきかを含めた学習を可能にし、モジュール組換えによる知識の自己創出的な獲得を実現する。さらに、中長期のインタラクション実験により、知識の累積的な獲得が可能であることを実証する。
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