本研究は、統合された知識を分解し、再編成することで新しい知識を生み出し、「歴史知識学」を発展させていくことを目指し、連続する時間に裂け目を入れることにより、新たな不連続面を生じさせ、事象に対する様々な見せ方を提示できるシステムの設計・及び開発を行った。 まず、膨大な編年型データを抱える学問分野である歴史学を対象として、歴史史料(大日本史料)を用い、歴史学者のニーズや思考プロセスについて考察を進めながら、編年型データ解析の基本システムの設計・開発を行った。このシステムは、編年型データに対する汎用的な解析手段を提供することを目的とし、(i)データ全体の俯瞰、(ii)分析の着眼点の獲得、(iii)詳細分析という解析プロセスデザインに基づき、データを視覚化し、様々な観点からのデータパターンを提供するものである。 次に、概念を表す言葉の意味の変化を捉えるために、概念構造の変化、概念間の関係の変化を扱う仕組みについて研究を行った。これに基づき、概念の体系化を行い、時間変化に伴い動的に変化する概念体系構造を構築する方法について明らかにすることにより、編年型データ解析フレームワークを実現した。 さらに、解析結果により得られた新たな視点に基づき、史料の構造化を行い、新たな知見を生み出す歴史編纂技術と統合することにより、『資料の知識化・構造化フレームワーク』を構築した。 これらの歴史知識の抽出・理解支援機能を、史料の管理・編纂結果提供を可能とするADEAC(ASystem of Digitalization and Exhibition for Archive Collections)と組み合わせることにより、大量の史料から、ある程度の確からしさをもつ連想を誘導する仕組みを提供することを可能とし、その成果を特集論文としてまとめた。
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