研究課題/領域番号 |
25330280
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
鈴木 智也 茨城大学, 工学部, 准教授 (70408649)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 非線形時系列予測 / 集団学習 / ポートフォリオ理論 / 金融工学 / テクニカル分析 / 複雑系 / カオス理論 |
研究実績の概要 |
各企業の資金源として株式発行による直接金融の役割は,資本主義経済において重要であるが,我が国はリスクを恐れる国民性からか,投資家人口は欧米に比べて低い.リスク推定や制御に役立つ手立てとして,これまで統計学をベースとした金融工学やポートフォリオ理論が開発されてきた. しかし従来の理論モデルでは,直近のヒストリカルデータに基づく移動平均,標準偏差,共分散(または相関関数)といった線形統計量の枠組みに終始するため,非線形な複雑システムである金融市場への実用について疑問の余地があった.そこで本研究では,非線形予測モデルを導入することで,既存理論の予測能力を向上させ,さらに予測誤差をリスクと捉えることで,新しい非線形ポートフォリオモデルを構築した.なおこの予測誤差には,2乗収益率(ボラティリティ)と同様の時間記憶構造を持つ事を発見し,多変量GARCHモデルをも融合することで,非線形予測によってリターンのみならずリスクも予測できるポートフォリオモデルを構築した.これらの予測精度が向上するほど各投資資産の分配を適切に最適化できるため,リスク分散効果の向上も期待できる. さらに,金融分析手法としてテクニカル分析も代表的である.これは世界に先駆けて江戸時代の米相場から誕生した日本発祥文化にも関わらず,現在の日本の金融業界ではファンダメンタルズ分析が主流である.これは金融業界が未だ文系傾向にあることに起因している.そこで本研究では,テクニカル分析において理系のセンスを強化すべく,予測理論や集団学習などデータマイニング技法を取り入れることで,新しいテクニカル分析を開発している.さらに分析手法の妥当性を科学的に検証することが本分野のアカデミック化にとって極めて重要であるため,この一連の研究テーマを「Evidence Based Technical Analysis」と称し,次年度も継続・発展させていく.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H26年度の研究計画は,本研究のアイデアの発展課題(1-2),(2-2),(3-2)に取り組み,学会発表や学術論文に掲載することで先行性を確保することであった.なおそれぞれの発展課題の詳細は次のとおりである.(1-2)多変量ジャンプ過程のサンプリング手法の検討,(2-2)予測リスクをヘッジした非線形時系列解析 for サロゲート検定,(3-2)集団学習によって予測リスクをヘッジするポートフォリオ理論.いずれも交付申請書の研究目的を要約したタイトルになっている.さらに,昨年度(H25年度)に実施した基礎課題(1-1),(2-1),(3-1)についてはおおむね学術誌論文に掲載され,こちらも研究スケジュール通りに進展した.その結果,今年度は学術誌論文5編,国際会議論文7編の成果を得ている.以上により,研究目的および研究計画はおおむね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
現在の研究ペースを維持しつつ,研究計画を予定どおりに遂行することを目指す.研究計画や課題の変更については,特に見当たらない.なお今後の研究計画として,H27年度では残りの発展(1-3),(2-3),(3-3)に取り組む.詳細は次のとおりである.(1-3)非定常ジャンプ過程のサンプリング手法の検討,(2-3)予測リスクをヘッジした非線形時系列解析 for 非線形指標の推定,(3-3)多数銘柄によるポートフォリオの組合せ比率の最適化.これらの研究テーマを推進し,学会発表や学術誌論文への投稿を通じて,研究成果を世間に公開する.
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次年度使用額が生じた理由 |
物品が予定より安価に購入できたため.
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次年度使用額の使用計画 |
プリンターインクなど消耗品に使用する.
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