本研究では,非線形力学系(カオス力学系)を計算モデルとして用いた,実問題に応用可能な最適化手法の開発を目的とした研究を実施している。 本年度は,(1) 自己組織化マップ (SOM) とその派生法を用いたパレート解の可視化手法の改良,(2) 産業応用のための最適化ベンチマーク問題集の解析と拡充,(3) 可変計量勾配射影力学系を用いた利己的経路選択ゲーム問題の解法の拡張と高速化,(4) ラジアル基底関数ネットワークを用いた応答曲面法による電力系統用蓄電池の最適配置法の解析と改良,(5) 可変計量勾配射影力学系を用いたSVM学習法の提案を行い,2件の査読付き論文発表,5件の査読付き国際会議での発表,11件の国内学会発表を行った。 (1)では,昨年度提案したGHSOMを用いたパレート解の可視化手法に,バッチ型学習と学習パラメータ最適化を導入した手法を提案し,その有効性を数値実験を通して明らかにした。また,SOMの派生法の1つであるSOM-NGを用いたパレート解の可視化手法を提案した。(2)では,産業応用のための最適化ベンチマーク問題集の1つであるエネルギープラント運用計画問題に,スマートコミュニティの概念を導入した問題を新たに定式化した。また,太陽光発電モジュールの直並切り替え問題において,影の発生条件に対する解の変化を解析した。(3)では,従来の利己的経路選択ゲームの制約条件を多重型制約条件に拡張した新たな問題を提示し,その解法として可変計量勾配射影力学系を計算モデルとする解法を提案した。また,可変計量勾配射影力学系を計算モデルとする解法において,冗長となる経路をあらかじめ特定し削除する高速解法を提案した。(4)では,昨年度提案した手法について,ノード電圧に対する制約を考慮することができる解法を提案し,その有効性を検証した。(5)では,可変計量勾配射影力学系を計算モデルとする新たなSVM学習問題の解法を提案した。
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