研究課題/領域番号 |
25330285
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
庄野 逸 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 准教授 (50263231)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | Bayes推定 / 画像再構成 / PET |
研究概要 |
平成25年度の研究計画は要素技術の確認が大きなテーマであった.そのため,要素技術を,撮像を行う系,修復を行うためのモデル,実際の観測データに則した実験という形に分けて研究の遂行を行った.撮像を行う系としては,従来の Gauss 過程を観測に用いるのではなく Poisson 過程を観測系に用いたシステムを導入し,画像修復をおこなうようなシステムを提案している.この研究成果は PDPTA 国際会議において発表を行った.結果として修復を行うこと,系を支配するパラメータの推定を行うことなどが可能であることがわかってきた.それと同時に,修復結果が Gauss 過程を用いたものほど十分にはならないことや,その原因など,今後解決すべき問題点に関してもわかってきている. 画像修復を行うような事前分布のモデルとしては,相関型トポグラフィック解析を用いた生成系を導入している.この系は,GMRF と同様に,抽出した特徴の近傍間で強調作用を行うことで,データ生成を行うようなモデルである.このCTAが実際の画像データの生成系として適用可能かの検討を行い,概ね,よくデータを表現出来る可能性が高いことがわかってきた.本研究の内容は NIPS 2013 workshop ならびに,AISTATS 2014 にて発表を行ってきている. さらに PET 画像の画像修復をおこなうために,実際のPET観測データに適用した.この結果として従来提案してきた GMRF をもちいた画像再構成システムが比較的良好な結果を出すことがわかってきた.この研究は残念ながら発表するためのデータが完全に集まっていないため未発表である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究では,撮像原理の定式化の確認と事前分布の設計と大まかな評価を行うことになっていた.撮像原理の定式化においては Poisson 過程の下での観測画像から画像修復を行う手法を提案している.この方式は マルコフ確率場 (MRF) を事前分布として導入し,観測過程の Poisson 分布を近似することで提案していた画像修復のフレームワークに持ち込み,シミュレーションによる評価を行っている.結果として改良の余地はあるものの,概ね良好な結果が得られている.観測系を Poisson 過程にすることで,従来に提唱していた Gauss 過程との違いを把握することが出来るようになってきており,この違いが PET 画像などの観測系を変化させた場合にどのような影響をあたえるかが研究の焦点となってくる. 事前分布の大まかな設計としては 相関トポグラフィック解析 (CTA) を導入し生成モデルとして適用可能かを議論した.CTA は生成モデルとして非ガウス的な分布となっており,画像生成を行う事前分布として期待できる.我々は CTA を自然画像の解析ツールとして開発し,どの程度自然画像が記述可能なのかを検討した,その結果,自然画像だけでなく音声データなどにも有効そうであるといった予備調査結果が得られた. さらに, PET 装置実機による観測データを取得し,以前から提案していた MRF を用いた Bayes 手法に基づく再構成方法を適用した上で,大まかな評価を行った.結果としては,こちらも予想していた程度の画像修復は行えることが確認できたが,定量評価として用いるためには,もう少し改良する必要があることがわかってきた.
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今後の研究の推進方策 |
Poisson 過程を近似することで,画像修復自体が行えることが,本年度の研究成果としてあげられるが,未だ改良の余地があることもわかってきている.観測過程を Gauss 関数上の尤度関数で近似するため,事前分布が近似された空間での歪みを引き起こし,これが修復結果に悪影響を及ぼしていることがわかっている.事前分布として取り入れた GMRF は上述の近似した変数空間で考えているため,実際の Poisson 過程の母数の空間では値が大きいところでは強く強調しあうためスムージングの効果が強く出て,観測結果が過小評価されてしまうことがわかってきた.これを改善するために,推定値の大きさによる補正などを検討にいれていく.また,Gauss 過程との違いが PET 画像などの観測系を変化させた場合にどのような影響をあたえるかを数値シミュレーションで検討する必要があることがわかってきている. 事前分布として導入した CTA は概ね良好な成果を収めているので,今後,この事前分布が PET 画像の再構成にどの程度使用可能化を検討していく予定である.非ガウス的な事前分布を導入しているため,フーリエ空間での再構成は困難となることが予想されるため,再構成手法として代数的解法を導入することで,PET 再構成アルゴリズムを再構築する予定である. また PET 装置実機による観測データを取得することができたので,このような実機データに対して,提案しているMRF 的な手法が,比較的良好に作用することが昨年度の予備実験としてえられているので,この部分に関しては L1 的な要素を導入した非ガウス的な MRF を事前分布とするようなモデルを構築していく予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
年度末に投稿論文の掲載費用が発生する可能性があったため,当該金額を残した形で維持したが結局使用しなかったため次年度に繰り越すこととした. 今年度の論文の掲載費用として用いる予定である.
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