最終年度に行った研究を下記する。 1. 昨年度までに確立した、境界が時間的に変化し、かつ拘束を有する系に対する安定性をより容易に行うための手法を検討した。具体的には、FloquetおよびFilippovの理論を応用した安定性解析手法およびブルートフォース法を用いた安定性解析手法を構築した。また、計算機により提案手法を実装し、シミュレーション結果との比較により手法の正当性を示した。 2. Poincare写像および1.で提案した安定性解析手法を用いて、バウンシングボールモデルにみられる安定性を調査した。また、拘束現象を伴う周期軌道の分岐メカニズムを解析した。 3. 境界の形状の違いが拘束を伴う衝突振動系の安定化作用に及ぼす影響を検討した。具体的には、バウンシングボールモデルを模擬した実験系において、解軌道およびワンパラメータ分岐図を用いて周期外力を正弦波および三角波と変化させた際の分岐現象の差異を検討した。その結果、本質的に同じ現象がどちらの系にも観測され、同様のメカニズムで安定化作用を失うことを確認した。 本研究課題は、衝突振動系において、系に生じる拘束が振動の抑制に大きな役割を担っており、また、何らかの力学的影響でその安定性が失われる可能性が高いと考え、そのメカニズム解明を試みた。解析を進めた結果、拘束面の速度の極値を境界とする分岐現象により、拘束現象を伴う周期軌道の定性的性質が変化すると結論づけた。
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