多目的ファジィ遺伝的機械学習の並列分散実装において,高精度な知識が獲得できない問題に対して研究を行った.2つの目的関数(識別精度の最大化と複雑性の最小化)を回転行列を用いて修正し,複雑性の最小化を緩和することで,識別精度の最大化を強調するようにすることで,より複雑かつ高精度な知識が獲得できることを明らかにした.ただしデータによっては,単純に複雑な知識が増加するものの,精度が改善されないという問題も確認された.そこで,部分個体群ごとに,異なる回転角度で修正された目的関数を割当,探索性能の改善を試みた.この成果に関しては,国内外の会議にて発表を行った. またこれまでは,進化型多目的最適化手法として,優越関係に基づく代表的な手法であるNSGA-IIを用いてきたが,アルゴリズムの並列化と,目的関数の方向性を決定し易いという観点からMOEA/Dを用いた実装も行った.MOEA/Dは,多目的最適化問題をスカラー化関数を用いて複数の単一目的最適化問題に分割する手法である.様々なスカラー化関数を用いることができるため,データに合わせて異なるスカラー化関数を用いることができる.この成果に関しては,国内の会議にて発表を行った. さらに,ファジィ識別器だけでなく,区間集合を用いた識別器を設計することが可能である遺伝的機械学習手法GAssistの並列分散実装とファジィ遺伝的機械学習との比較を行った結果を国際会議論文としてまとめて採択された. 論文発表以外では,台湾で開催された国際会議にて,遺伝的ファジィシステムとそのデータマイニングへの応用というタイトルでチュートリアル講演を行い,並列分散知識獲得を紹介した.また,グラナダ大学のSalvador Garcia博士に招聘され,進化型ファジィシステムのセミナーを行い,これまでの並列分散型知識獲得の成果を紹介した.
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