研究課題/領域番号 |
25330296
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
筒井 茂義 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 客員研究員 (90188590)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | GPU / GPGPU / メニーコアプロセッサ / 並列進化計算 / 並列計算の汎用化 / SIMD / MIMD |
研究概要 |
最新の代表的なGPUであるNVIDIA社のGTX 680は1536個の小さいプロセッサ(Core,コア)を搭載し,数万の「スレッド」が同時実行可能な並列計算環境を低コストで提供している.そのピーク演算性能は3TFLOPS(テラ・フロップス)を超える.このためGPUは価格性能比が非常によく,様々な科学技術計算へGPUを適用するGPGPU (General Purpose computation on GPU) に関する研究がここ数年盛んになってきた. 遺伝的アルゴリズム(GA)に代表される進化計算は,個体 (Individual) レベル,集団 (Population) レベルなどでの処理の並列性が高く,並列計算に適した計算手法である.しかし,多くの研究では,GPUによる効率性の高い並列進化計算は,対象問題や進化計算のモデルに依存して個別に工夫されて実装されているのが現状である. 本研究は,対象問題や進化計算モデルに対して依存しない並列進化計算の汎用フレームワークの構築に関する研究を目的とするものであるが,本年度は,2次割当て問題(QAP)を取り上げ,アントコロニー最適化法(Ant Colony Optimization, ACO)にタブーサーチ(Tabu Search, TS)を組合せて解く手法の汎用化法として,効率的にスレッドを生成するMATA (Move-Cost Adjusted Thread Assignment) と呼ぶ方法を提案し,4つのGPUを用いて高速に実行する方式を確立した.今後は,更に多くの問題に適用できるように汎用化を図る研究を進める予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
進化計算をGPUを用いて並列実行する研究は多くあり,現在行われている多くの研究の状況を把握することを目的に,Strasbourg大学(仏)のPierre Collet教授と共編で申請者の著作2章も含めて19章からなる書籍をSpringerから2013年12月に出版した. GPUでは,同じ命令からなる処理を「スレッド」として多数生成され,それらがSIMD (Single Instruction, Multiple Data)風に並列実行される(NVIDIA社はSingle Instruction, Multiple Thread: SIMTと呼んでいる).SIMTでは,マルチコアCPU(MIMD, Multiple Instruction)を用いる並列進化計算のように複数のスレッドを独立したプログラムとして柔軟に実行することができない.このため,並列計算に向いている進化計算といえどもGPUの超並列性を効率的に実現するには,問題に応じて進化計算のモデル構築や実装法に多くの工夫が必要となる.本研究で提案した効率的なスレッドを生成であるMATA(Move-Cost Adjusted Thread Assignment)は,汎用性があり,本研究の目的である,対象問題や進化計算モデルに対して依存しない並列進化計算の汎用フレームワークの構築に関する研究に向けた大きな研究成果である.なお,この方式は,進化計算の国際学会GECCO2013のGPUスピードコンテストで優勝した.
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今後の研究の推進方策 |
本年度の2次割当て問題(QAP)のみならず,多くの問題の組合せ最適化問題に適用できる方式の研究を今後進めていく. GPUは,多くのコアを有するメニーコアプロセッサがSIMD (Single Instruction, Multiple Data)風に実行されるが,一方,MIMD(Multiple Instruction, Multiple Data)アプローチのメニーコアプロセッサの開発も,Intel社のXeon Phiにみられるように行われている.このようなアプローチのプロセッサとGPUとの比較研究も重要であり,今後取組んでいく. また,進化計算の並列化の研究においても,進化計算自体の効率化の研究も重要である.効率的な進化計算の実現に関する研究も,本研究の一環として取り組む予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
人件費・謝金を予定していたが,研究遂行今年度は使うことなく研究活動を遂行できた. 助成金を有効に活用すべく、全体の研究推進の中で計画的に利用するべく研究を推進するが,今年度の研究成果報告の出張が増える見込みであり,その補充に使うことも検討する.
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