研究課題/領域番号 |
25330296
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
筒井 茂義 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 客員研究員 (90188590)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | GPU / GPGPU / 並列進化計算 / SIMD / MIMD / QAP / メニーコア計算機 |
研究実績の概要 |
画像表示用に開発されたGPU(Graphics Processing Unit)は,多数(数百個以上)の小さな演算装置(コア)から構成され,並列性を有する問題に対しては非常に高性能な演算装置となる.しかしながら,これらの高い並列性を実現する方法は解く問題に依存する. 本研究課題が対象としている進化計算は,多数の解候補を生物集団にみたてて,集団で解候補(個体)を進化(改善)させることにより,従来の決定論的方法では解くことが困難であった問題の解法に有効な手法である.進化計算は,集団,個体,遺伝的オペレータの各レベルにおいて並列性を有するため,GPU向きの計算手法である.しかし,進化計算をGPUにより効率よく並列実行するには,集団,個体,遺伝的オペレータの各レベルで有効に並列性を確保する為の工夫が欠かすことができない.また,対象問題(個体)にも依存する. 本研究では,多くの組合せ最適化問題の一般形である2次割当て問題(QAP;Quadratic Assignment Problem)をとりあげ,GPUを用いて進化計算で解く手法の一般化を進めた.特にGPUは,多数のスレッドをSIMT(Single Instruction, Multople Threads)と呼ばれる方法で並列実行が行われるが,この際,異なるスレッドの処理において異なる分岐による処理の流れがある場合,遅延が発生する.本研究では,このような遅延が発生しないようにスレッドを効率的に制しえする手法(MATA; Move-Cost Adjustment Thread Assignment)を提案し,GPUにおける並列計算の効率化の手法として確立した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多数のコアを有する計算機(メニーコア計算機)の実現方法として,GPUは各コアがSIMD(Single Instruction, Multiple Data)風に実行されるが,これとは異なり,性能は低いが通常のマルチコアCPUのようにコアを数十集積する演算装置Xeon Phiがインテル社から発売された.Xeon Phiは通常のマルチコア計算機と同様の構造(MIMD; Multiple Instruction, Multiple Data)で並列計算用のプログラミングが行えるという利点がある.そこでGPUとXeon Phiの進化計算を実行した場合の性能の比較は興味あるテーマである.この比較を行った結果,GPUの方が10倍以上高速になるという結果を得た.これにより本研究のアプローチの有効性が確認できた. 進化計算を高速に実行するという観点からは,並列化は重要であるが,進化計算自体の高性能化の研究も重要である.効率よい進化計算は,解を少ない世代で得ることができ,計算の高速化につながる.この観点からの研究も平行して進め,非対称交叉オペレータの提案を行い,その有効性も確認した.この手法は,GPUへの実装も容易である.
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今後の研究の推進方策 |
GPUとXeon Phiの比較において,GPUが1桁高速であることを確認したが,Xeon Phiのプログラミング手法に改善の余地がある.このため,マルチコア計算機の標準的並列プログラミングモデルであるOpenMPの効率的並列化の研究も今後取組んでいく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
12月の学会の予定で,前倒し支払請求額を400,000円としたが,安い航空券とホテルが見つかり,節約することができた.
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次年度使用額の使用計画 |
前倒し支払請求額の残額であるので,今年度の当初の予定よりは不足するが,全体として貴重な研究資金であるので有効利用に努めたい.
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備考 |
筒井研究室 http://www.hannan-u.ac.jp/~tsutsui 研究活動を紹介するページです.
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