研究実績の概要 |
同一人物を様々な方向から観測すると、複数の画像が得られるが、これらを個別に記憶することは自然な情報表現ではない。しかし、Isingスピンで構成されるHopfield型の連想記憶モデルに複数の観測画像を記憶した場合、個別の点アトラクタとなって保存されてしまう。本研究では、連想記憶モデルをXYスピン系に拡張することで、連続アトラクタが現れることを発見した。この知見を利用すれば、同一人物の顔画像を数珠つなぎにした連続アトラクタとして格納することが可能となる。そこで、XYスピン系に拡張した連想記憶モデルの性質をより詳しく知るために、統計力学による解析で包括的に明らかにすることを試みた。 まず、無相関の記憶パターンを学習した場合について、記憶パターン同士がどのような連続アトラクタで結ばれるのか調べた。その結果、A,B,Cの記憶パターンがある場合、A⇔B、B⇔C、C⇔Aというように、相互に直接行き来するように連続アトラクタで結ばれ、A⇔Bの途中の状態からCに行くような連続アトラクタは存在しないことが分かった。記憶パターン数を4個以上に増やしても、3個の場合と同じく記憶パターン同士を直接結び付ける連続アトラクタが出来上がることが分かった。 次に、記憶パターンに相関が入った場合についての連続アトラクタを解析した。その結果、3個の記憶パターンの場合は連続アトラクタが存在するが、4個以上になると消滅することが分かった。これでは、同一人物の顔画像を数珠つなぎにした連続アトラクタをつくることができない。そこで、記憶パターンにランダムなフリップノイズを入れることで、連続アトラクタを発生させやすくできることを発見した。 また、XYスピン系を位相振動子系に拡張した場合についても解析し、位相振動子系でも連続アトラクタが存在することを発見した。
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