平成27年度は,物体操作を伴う作業を対象に,ロボットの動作計画を可視化して遠隔操作者に提示することによって,遠隔操作がロボットによって正しく解釈されたことを事前に確認し,さらにロボットの動作計画の事後的な修正を可能にする方法の開発を進めた. ロボットの動作を計画するために,まず遠隔操作者の腕の運動を計測し,遠隔操作者の手指の把持形態(把持・非把持)が変化する時刻を始点もしくは終点とする手の運動軌跡を得る.次に,ロボットに搭載されたRGB-Dカメラから得られる距離情報を利用して環境の3次元計測を行い,障害物に衝突せず,かつ遠隔操作者の手の運動軌跡と同じ始点と終点を接続するロボットの多指ハンドの運動軌跡を,RRT法に基づく経路探索法によって計算する. 計算されたロボットの運動軌跡を3次元計測データとともに可視化して遠隔操作者に提示し,遠隔操作者がロボットの運動軌跡を確認した上で確定することによって,RRT法のようなサンプリングに基づく経路探索法でしばしば問題となる想定外の経路を棄却することが可能になり,安全に遠隔操作を進めることが可能になった. また,多指ハンドによって物体を把握するためには,mm単位オーダの正確な位置合わせが必要になるが,遠隔操作者の腕の大域的な運動と手指の精密な位置合わせを同時に計測することは難しい.そこで,運動計画時に手指(多指ハンド)と物体の距離が閾値以内となった場合に,物体に応じた最適な把持位置に多指ハンドの位置を自動的に修正するスナップ機能を実装した.これによって,遠隔操作者は作業計画や環境認識などの高次の作業に集中することが可能になり,効率よく遠隔操作を進めることが可能になった.
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