研究課題/領域番号 |
25330308
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研究機関 | 会津大学 |
研究代表者 |
成瀬 継太郎 会津大学, コンピュータ理工学部, 准教授 (10301938)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | スワームロボティクス / マルチエージェントシステム / 群れ形成 / 可視化 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は数百万個体からなる群れの性質を解明し,それを群ロボットの移動制御に応用することである.まず群れの個体数が増えた時にどのように運動の様相が変わるか=相転移が発生するかを解明する.とくに相転移現象の数理的表現と発生条件を、個体間の近傍ネットワークの時間変化と運動の相互作用の視点から解明する.そして数百万個体からなる大規模群れでの包括的な数値実験を行い,理論を検証する.応用として超多数移動ロボットの制御手法を構築する. 上述の目的に対して本年度は,以下を行った. (1)群れの挙動の相転移の現象の解明に対しては,個体数による群れの維持能力の変化と個体間の接続関係が相転換の主たる要因と仮定し,とくに群れの接続関係の変化を巨視的に記述するモデルを開発した.これは群れの中で接続している2個体間の位置と速度に基づき,近い将来の2個体間に最大距離を推定する近似モデルである.このモデルにより,どの接続が将来分断する可能性が高いかが表現され,群れの安定性と接続変化の予想が可能になった.この近似モデルは実際の群れ挙動と比較し,その近似精度を検証した. (2)GPGPUを用いた群れ挙動の数値計算と可視化システムを開発した.百万個体の場合でもほぼリアルタイムで群れの数値計算と画面への表示が可能となった. (3)超多数の移動ロボット制御法として,上で開発した群れの2個体間の最大距離推定モデルを利用した,制御方式を開発した.これは近い将来に分断が予想される個体間により大きな群れ維持力を発生させるものである.これにより大きな群れを維持しながら,群れ全体に移動制御を行うことが可能になった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(A)相転移の解明のためには,様々な初期条件や群れ形成則のもとで群れの挙動を観測し,そこから群れ形成の不変量や相転移のための特徴量を発見的することが不可欠である.そのためには,高速な数値計算が必要である.本年度は,そのためにGPGPUを用いた群れ挙動の数値計算と可視化システムを開発し,百万個体からなる群れでもほぼリアルタイムでの計算と表示が可能となった.そのため,来年度における相転移の特徴量を開発が可能となった. (B)超多数のロボットの移動に関しては,一体のロボットをその他の多数のロボットが群れ形成をしながら追従する制御を行う.そこでは,各ロボットは近傍のロボットと通信を行い,情報交換しながら局所的な制御を行う.そのため,ロボット間の距離が離れすぎると通信が不可能になり,ロボット制御ができなくなってしまう.そのため,群れを維持し続けることが重要な課題となる.本年度は,その制御方法の確立のために,群れにおいてどのロボット間の結合が分断されるかの予想指標を開発した.これは2つのロボットに対するもので,その2つのロボットの相対位置と相対速度からロボット間の最大距離を予想するものである.もしそれがロボットの観測半径より大きくなると,その結合が分断されると予想する.これは2つのロボット間に対する近似モデルであるが,局所性が高いため超多数のロボットに対しても適用可能である.さらに,この分断予測を制御に適用することにより,従来のものよりロバストな群れ形成則を開発し,数百個体のロボットの数値計算で検証した.
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今後の研究の推進方策 |
(A)相転移の解明に対しては,群れの密度が支配であることを仮定して,特徴量の開発を行う.まず,群れ運動の複雑性を各ロボットの速度の時間変化と空間的な分布の多様性と捉える.そして,ロボットが動作する空間と個体数を変化させたときの群れ運動の複雑性を計測する.その計測結果を空間全域におけるロボットの密度と,群れ内部のロボットの密度との関係から解析し,群れ運動の複雑性の相転移の解明する. (B)超多数のロボットの移動に関しては,開発した群れ分断予想を導入した制御則の群れ維持能力を解析する.まず,外乱が群れ維持に対して与える影響を解析し,それを基本の群れ維持能力とする.次に,群れ分断予想に基づく制御が,どの程度群れ維持能力を高めるのかを調査する.そして,群れ維持が可能なロボットの数,運動の複雑性を明らかにし,百万個体のロボットに対する群れ移動制御を数値実験により検証する.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に国際会議で論文発表するために国外旅費を予定していたが,論文が採択されずにその分を次年度に使うこととした.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度はこの事業の最終年度であるため,積極的に雑誌論文と国際会議などで論文発表を行う.さらに大規模の群れのロボットの数値計算を行うため,計算機とGPGPU購入し,研究の推進に努める.
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