研究課題/領域番号 |
25330314
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 株式会社国際電気通信基礎技術研究所 |
研究代表者 |
池田 徹志 株式会社国際電気通信基礎技術研究所, 知能ロボティクス研究所, 研究員 (50397618)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 人物追跡 / 観測の信頼性 / 測域センサ |
研究概要 |
H25年度は,現有する設備の測域センサおよびビデオカメラを用い,移動する人物の様子を実験室内で計測した.様々な遮蔽の条件下での人物の様子を計測するため,壁などで遮蔽される部分を含む環境下に,6台の測域センサを設置して計測を行った.環境内に1人のみが移動する場合や,複数人がすれ違うことにより大きく遮蔽が起こる場合等も計測を行い,遮蔽の程度の異なる様々な条件での計測を蓄積した. 取得した測域センサの計測を解析し,それぞれの人物の遮蔽の程度を定量化する予備的な解析を行った.解析には,購入したデータ解析用ソフトウェアも併用し,作業の効率化を行った.複数の測域センサで計測された人物の輪郭線を合成し,得られたそれぞれの人物の周囲360度の輪郭の中で,遮蔽されずに計測されている割合を計算した.この割合を遮蔽率と定義し,人物が移動する時の遮蔽率の変化を求めた.同時に,標準的な人物追跡手法に基づき,複数の測域センサによる計測を用いて人物の位置推定を行った.その結果,計算した遮蔽率と人物位置推定手法による人物追跡の失敗率には,多くの場合に正の相関関係が見られることを確認した. この結果より,標準的な人物追跡手法で追跡が失敗する原因は,遮蔽によって観測の信頼度が落ちていることと考えられる.観測の信頼性が低下した条件では,過去に計測されたその場所での典型的な行動などの知識を統合することにより,人物追跡の精度が向上する可能性がある.上記の予備的な解析の結果は,観測の信頼性を実際に評価する方法として,遮蔽率は有望な指標であることを示唆している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H25年度は,様々な遮蔽の起こる条件下で,提案する遮蔽の定量化手法を評価する予備的な解析を行った.測域センサで計測されたそれぞれの人物の輪郭の周囲360度の方向の中で,遮蔽されずに計測されている割合を計算し,遮蔽率を求めた.その結果,計算した遮蔽率と標準的な人物追跡手法による追跡の失敗率には,多くの場合に相関関係が見られることを確認した.この結果より,標準的な人物追跡手法で追跡が失敗する場合には,観測のみを過度に信頼せず,過去に計測されたその場所での典型的な行動等の知識を統合することにより,人物追跡の精度向上につながることが期待できる.予備的な解析結果において,測域センサの計測から求められる遮蔽率が追跡失敗を予測する良い指標となったことは,提案する手法の有効性を示唆していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
今年度行った予備的な実験に基づき,次年度のH26年度以降には,遮蔽率の計算手法についても改良を進め,追跡結果の不安定性を高い精度で予測できる指標を確立する.また遮蔽率は観測の信頼性を推定する重要な指標と考えられるが,それ以外にも計測するセンサからの距離などの場所の情報など他の情報も統合して,観測の信頼性の推定に取り組む.その指標を用いて,また,既に計測を行った実店舗内での顧客の行動データを利用し,場所依存の行動モデルを構築する.遮蔽率の指標に基づく観測の信頼性評価指標を用いて観測と行動モデルを統合することにより,遮蔽の環境下で人物追跡の高精度化を実現する.
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次年度の研究費の使用計画 |
センサネットワークの構築用の機材の購入の際に,実験の状況に応じて購入するセンサおよび購入価格を精査した結果,当初の予定よりも費用が抑えられたため,差額を次年度の実験に用いることとした. H26年度に予定されている実験に必要な電子部品の購入を行う予定である.
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