本課題では,人物計測の際に生じる遮蔽に注目した人物追跡手法の研究を進め,提案手法を用いた人物追跡を用いて人がすれ違う際の行動計測の研究に発展させた.遮蔽の定量化については,複数のレーザーレンジファインダを用いて人物追跡を行う手法に注目し,それぞれの人物を遮蔽無しに観測可能な程度を評価することにより,人物追跡時のモデルを修正する方針で研究を進めた.様々な遮蔽条件において実施した人物追跡実験の結果により,人物が移動する際の遮蔽率と,人物追跡の失敗率には相関があることを確認し,人物追跡で用いる行動モデルに遮蔽の評価の導入を試みた.さらに,提案する人物追跡手法を用いて,歩行者と自律移動の車いすがすれ違う際の行動解析の研究に発展させた.自律移動の電動車いすが日常生活環境で用いられる場合には,今後の挙動が不明なため,搭乗者や周囲の歩行者が不安に感じる問題点がある.この問題に対し,車いすがこれからの挙動について情報提示を行う実験を行い,遮蔽が生じる環境でも歩行者の位置を精度良く求めることにより,歩行者の移動軌跡を解析した.その結果,情報提示を行うことにより,歩行者の移動軌跡がより安定になり,移動方向の分散が有意に低下することが分かった.実験後に行ったアンケート調査の結果と合わせ,車いすが挙動の情報提供を行うことにより,歩行者がより安心して車いすとすれ違うことができることが示された.論文誌2件,解説論文1件,国際会議1件,国内発表1件の成果を得た.
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