ラフ集合による関係性マイニング手法の更なる発展に向けて,平成27年度は主に,関係性マイニングの理論面の拡張および応用可能性の検討に関する研究を行った.具体的には,1.データ中に値の欠損がある場合の関係性マイニングに関する検討,2.関係性マイニングの表現能力の検討,および3.関係性マイニングの感性情報処理への応用を行った.また,前年度に引き続き,4.関係性マイニングに係る縮約計算の並列化および高速化手法の改良も行った. 1.データ中に値の欠損がある場合の関係性マイニングに関する検討:関係性マイニングは2つの属性における属性値の比較に基づくデータ分析手法であるため,データ中の欠損値の存在は,属性間の関係性の抽出に大きな影響を及ぼす.そのため,属性間での関係性成立の有無を記述する新たな属性(相互関係属性)で,関係性を調べる属性における値の欠損に起因する,新たな欠損値を導入する手法を検討した. 2.関係性マイニングの表現能力の検討:関係性マイニングにより抽出された,相互関係属性を含む縮約計算結果について,得られる決定ルールの評価指標に関する性質の検討を行った. 3.関係性マイニングの感性情報処理への応用:関係性マイニングを系列データに対して適用する手法を検討し,その応用事例として,系列データに対する関係性マイニングを用いた楽曲推薦システムを試作し検討した. 4.関係性マイニングに係る縮約計算の並列化および高速化手法の改良:著者らが前年度に開発した,関係性マイニングに係る縮約計算の並列化および高速化手法について,高速化に関する部分の改良を行い,計算機実験によりその有効性を検証した。
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