研究課題/領域番号 |
25330318
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
吉田 宏昭 信州大学, 学術研究院繊維学系, 准教授 (40456497)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 数値解析 / 感性計測 / 有限要素法 / 寝心地 / ベッドマットレス / シミュレーション / 寝具 / 感性工学 |
研究実績の概要 |
寝具上に寝た際に生じる生体内変形とそれに伴う生体内応力を我々は寝心地として感じているため、生体内変形と生体内応力を推定できる数値解析は、寝心地を評価する際に非常に有益である。また、人間の体型には個人差があり、そのため、各個人に適した寝具は異なると予想される。各個人に適した寝具を探すには、評価実験をするしかなく、非常に時間を要してしまう。しかし、数値解析を用いれば、コンピュータ上に様々な体型の人体モデルを比較的容易に作成できるので、評価実験をすることなく、寝具の寝心地について検証できる可能性がある。そこで本研究では、数値解析手法を用いて、人体と寝具の数値モデルをコンピュータ上に構築し、体型が変化すると生体内変形に伴って生じる生体内応力がどのように変化するのか調査し、寝心地について考察した。 まず、男子大学生の体型を再現した2次元の人体数値モデルを構築し、この人体数値モデルを基準モデルとした。体型は身長と身体各部の厚径によって表現できると単純に仮定した。基準モデルの身長方向は0.9倍から1.1倍まで、厚径方向は0.8倍から1.2倍まで伸縮させ、体型の違いを表現した。数値解析手法として有限要素法を用い、腰部と頚部周辺の相当応力と沈み込み量を調査した。 有限要素解析の結果、身長が高くなると、腰部は沈み込みにくくなり、腰部の相当応力は低くなった。身長が高くなると、頚部では沈み込み量は増加し、相当応力値も増加した。逆に、身長が低くなると、その逆の傾向であった。 次に、厚径方向だが、厚径方向が増えると太っていくことになる。太っていくと腰部の沈み込みが大きくなり、腰部の相当応力は大きくなった。頚部では、太っていくと沈み込みが大きくなったが、頚部の応力は減少した。逆に、痩せていくと、その逆の傾向であった。つまり、体型によって寝姿勢が変化することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、平成25年度から3年間で、被験者の体型を再現した人体有限要素モデルを作成し、有限要素解析結果と実測結果との対応関係を調査することによって寝心地シミュレータを構築し、寝具の嗜好度や睡眠の質といった寝心地を推定することを目的としている。 ・平成26年度は、平成25年度の有限要素解析の研究成果を発展させて、身長と厚径を用いて、様々な体型を再現した人体有限要素モデルを構築し、体型によって寝姿勢が変化することを定量的に調査することができた。厚径方向の変化は身長方向よりも複雑であり、特に、頚部は体型の特徴が出やすい部位であると推察された。 ・有限要素解析の結果、体型は異なっているが、生体内応力値がほぼ同じような体型群があることが分かってきた。生体内応力が同じということは、寝心地評価が同じである可能性がある。この結果を詳細に検討すれば、寝具の嗜好度や寝心地を推定できると予想された。
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今後の研究の推進方策 |
・平成26年度に、被験者の寝姿勢を計測する装置を別途開発した。この装置は、リアルタイムに被験者の体圧分布と沈み込み量を計測でき、寝姿勢の変化をとらえることができる。体型の違いによって寝姿勢が変化することが有限要素解析結果から示唆されたので、体型による寝姿勢の違いを計測し、解析結果と比較し、生体内応力の意味について考察する。 ・アンケートを利用して心理評価を行い、有限要素解析結果と比較して、寝具の寝心地に関する考察を深めていく。 ・平成26年度の研究成果で、生体内応力値がほぼ同じような体型群があることが分かってきた。様々な体型をコンピュータ上に再現し、その体型と同じ被験者を用いて睡眠実験を行う。 ・有限要素解析結果、心理評価結果、睡眠実験結果の関連を検討し、生体内応力と寝心地の関係性を解明し、寝心地シミュレータを構築する。 ・最終的には、寝具の嗜好度、睡眠の質といった快適な睡眠生活を送る上で必要な感性情報を明らかにし、寝具特性や体型などといった寝心地を決定する要因を特定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度に、物品として寝返り動作を測定可能な加速度センサを購入する予定であったが、当研究室にある寝姿勢計測装置を用いて寝返り動作が計測できた。そのため、当初計画で見込んだよりも安価に研究が進んだため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は、追加実験で終夜睡眠実験を行う予定である。その際、体圧センサから睡眠の質を推定したいと考えており、平成26年度の未使用額をその経費に充てることにしたい。 睡眠実験を行うので、消耗品としてディスポ電極を購入する。睡眠実験や寝心地に関するアンケート調査を行うので、被験者謝金が必要であり、人件費として使用する。日本感性工学会や繊維学会にて研究成果を発表するために、国内旅費として使用する。
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