寝具上に寝た際に生じる生体内変形とそれに伴う生体内応力を我々は寝心地として感じているため、生体内変形と生体内応力を推定できる数値解析は、寝心地評価に対する有益なツールである。また、人間の体型には個人差があり、そのため、各個人に適した寝具は異なると予想される。各個人に適した寝具を探すには、評価実験を行うしかなく、それでは非常に時間を要してしまう。数値解析を用いれば、コンピュータ上に様々な体型の人体モデルを比較的容易に作成できるので、評価実験をすることなく、寝具の寝心地について評価できる可能性がある。そこで本研究では、数値解析手法を用いて人体と寝具の数値モデルをコンピュータ上に構築し、体型が変化すると生体内変形に伴って生じる生体内応力がどのように変化するのか調査し、寝心地について考察した。 まず、男子大学生の体型を再現した2次元の人体数値モデルを構築し、この人体数値モデルを基準モデルとした。体型は伸張と身体各部の厚径によって表現できると仮定した。基準モデルの身長方向は0.9倍から1.1倍まで、厚径方向は0.8倍から1.2倍まで伸縮させ、体型の違いを表現した。数値解析手法として有限要素法を用い、腰部と頚部周辺の相当応力を調査した。 様々な体型を模した数値人体モデルの生体内応力を調査した結果、体型が異なっても生体内応力分布が同じ体型グループがあることが分かった。生体内応力分布が同じということは寝具の好みや寝心地が同じであるという可能性があり、体型が異なっても寝具の好みや寝心地が同じ体型グループがあることが示唆された。これまで寝具の好みに対しては様々な見解があり、寝具の好みに対して不明な点が多かった。今後、この生体内応力分布が同じ体型グループと寝心地に関する心理計測との関連が明らかになれば、数値解析を用いて寝具の好みや寝心地を解明できると考えられる。
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