本申請研究は,人間を対象とする関係データの解析において,定性的かつ多元的に表現された関係データを取り扱う解析手法の確立および一般化を目的としている.ここでの定性的かつ多元的とは,好き嫌いの感情や信頼性の評価など,数値化が困難な複数の指標を意味する.また,データのクラスタリング手法を構築し,データ集合の(メタ的な階層性も含む)階層性の解析への拡張を試みることも目的である.さらに,スポーツにおいて重要とされている動機づけに関して,チーム内の人間関係が個人の動機づけや競技成績に与える影響を解析するために,チーム構成員への意識調査に基づいて,チーム内の人間関係を適切に表現する関係データの構築を行うことを目指している. 上記の目的を達成するために,本年度は,行動変容のためのユーザへのフィードバック方法を検討するために,大学院生15名を対象として,各学生の一日の学習時間,研究時間などのデータを収集し,その集計結果を週に1度ユーザへフィードバックすることで,動機づけにどのような影響と与え,研究時間などがどのように変化するかを調査した.フィードバックに際し,学生を3つのグループ(グループA,B,C)に分け,それぞれ,自分自身の集計結果のみを受け取るグループ,全員分の平均値のみを受け取るグループ,全員分の(具体的な数値.個人名は伏せてある)を受け取るグループとした.3か月後,各グループの学習時間,研究時間の増加率を求めた結果,有意差は見られなかったが,全員分の平均値のみを受け取るグループが,他のグループと比較して増加率が高い傾向がみられた.考察として,自分自身のデータのみならず,他人のデータも受け取ることで,動機づけが強化されると考えられる一方,データがある程度整理された形(今回は平均値を利用した)の方が自分と他人の比較が用意であるので動機づけにつながりやすいと考えられる.
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