(1)耳介形状を測定するだけで音像定位能力を推定する手法を提案すること、(2)実時間で立位姿勢から感情を読み取る仕組みを構築することを目的とする。 (1)に関しては、MRI装置を用いて石膏でできた耳介形状を三角ポリゴンで構成される3次元データ化し、本研究で提案した音源方向に依存した鏡面反射形状特徴量を計算し、音像定位能力の心理量との関係を分析した結果、強い相関があった。個人によっては相関係数が0.9以上になり、関連することが分かった。さらに、鏡面反射形状特徴が存在する耳介部位を視覚化し、音像定位能力に影響を及ぼす部位を特定する手法を構築した。関連する部位は耳垂であることが分かり、耳垂にアダプターを装着し、音像定位実験を行った結果、音像定位能力が向上する被験者がいることが分かった。 さらに、鏡面反射形状特徴量と音像定位能力に関係があることを検証するために、CADソフトで耳垂の角度を変えた耳介サンプルを作成し、鏡面反射形状特徴量を極大化する最適な耳垂角度(35°前後)を求めた。音像定位実験を行った結果、耳垂角度の変形と能動的な頭部運動が音像定位能力の指標であるRMS誤差値を小さくし、音像定位能力を向上させることが分かった。本研究の成果は、(i)鏡面反射形状特徴量が個人の音像定位能力を向上させる指標になるとともに耳介部位を特定できること、(ii)音像定位能力を向上させる要因として、耳垂角度を+35°にした耳介変形に加え、能動的な頭部運動をすることが重要であることが分かった点にある。 (2)に関しては、非接触型のKinectセンサーを用いて、実時間の立位姿勢感情推定システムを構築し、評価を行い、概ね感情を推定することが可能になった。立位姿勢や着座委姿勢から、空間にいる時の感情や気分を実時間で推定し,癒し空間を創出する照明・音響演出支援システムに応用できる目途がたった。
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