本研究では、腹部体表周囲上で送受信した音波伝搬時間データに、音波トモグラフィ法を適用することより再現される音速映像をもとに、内蔵脂肪分布や腹筋分布を描出できる腹部断面弾性組成映像法を実現するための検討を行った。具体的には、測定時間、再現精度、自動性能の面で実用要求を満足する検査装置の自動化に向けた諸課題の検討、ならびにその有効性を検証するための評価試験を行った。製作したシステムは対向超音波送受信器の体表周囲走査機構を中心に構成されており、腹部体表上の任意の測定点への移動、密着接触、音波送受信、切り離し、までの一連の操作を、腹部周囲上で必要な経路について繰り返す。本システムの実現に当たって、測定途中の被験者の呼吸や拍動にともなう体動の影響を回避する必要があるが、そのために、3台のレーザ距離センサによるリアルタイム体表輪郭検出および自動追尾機構を導入した。これにより、横移動ステージ2台/押込シリンダー2台/回転ステージ1台に取り付けられた対向送受信器対を、体表上の目標位置に0.1mmの位置決め精度で機械移動できる性能を実現した。その後の、コンピュータ取得波形からの伝搬時間算出ならびに音速断面画像の再構成計算、内臓脂肪領域の抽出処理まで処理を含めて、人手を介さずに操作できる自動検査装置として完成させた。本研究の最後では、以上に構築した検査システムを用いて、実際の被験者を対象にした臨床評価試験を行った。ここでは、背骨通過データの判別、腸内ガスの影響など、ファントム実験では十分な検討ができない諸項目を中心に評価試験を行った。同時に、本システムとX線CTによる検査結果とを比較照合することにより、本提案の腹部断面弾性組成映像法の有効性を評価検証した。
|