H27年度に行った位置計測装置とデータグローブを使った手話計測実験データを用いて,両腕,両手指の動作で表現される手話単語の認識手法を検討した.これまでに提案した,利き手と非利き手の腕運動の対称性に基づき,事前に手話単語を利き手のみで表現される片手手話,利き手が動いて,非利き手は定まった位置にとどまる優位調整,両手が対称的な運動を行う対称調整の3つのカテゴリーに分割する手法に,左右の手形状の違いを考慮するアルゴリズムの変更を加えてカテゴリーの分割精度を上げたうえで,それぞれのカテゴリーの単語ごとに経由点数を決定する方法,さらに腕運動情報と手形状情報の統合手法などと統合して,計測した360単語の手話単語の認識を行った.その結果,認識手法にMulti-Stream HMMを用いた場合には約90%,DPマッチングを用いた場合には約95%の認識精度を得た(投稿準備中). また,正確な腕運動を実現するための制御メカニズムを探るために並行して実施した,ペンで曲線などをなぞる運動の腕と視線の同時計測実験データをより詳細に解析した.腕の運動では手先の運動速度と,曲率半径の間に相関があることが知られているが,この計測した運動において,視線の固視点位置間における速度変化と曲率半径の変化の比率を比較した.EMアルゴリズムを用いてデータ群を分割したところ,同じ運動軌道の中でも曲率半径が大きい区間を描く場合と小さい区間でクラスタリングでき,それぞれで速度変化と曲率変化の間で異なる傾きでの線形回帰が可能であることを示した.これは,同じ運動中であっても,曲率半径の異なる運動区間では制御戦略が異なることを示唆しており,ジャーク最小モデルで運動軌道を近似したときに抽出される経由点(すなわち曲率半径が小さい点)が重要であるという,本研究課題で検証してきた手法が妥当であることを示している.
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