研究課題
生物の脳組織および神経細胞間の結合様式は、神経回路の構造、特性と深く結びついており、脳における情報処理メカニズム解明においても重要な情報をもたらす。しかしながら、脳のサイズや構造は、動物の種毎、個体毎に異なっていることから、各個体について実験的に得られた組織や細胞に関する情報を統合、活用するために、標準の座標系とも言える「標準脳」が動物種毎に必要となる。しかしながら、このような標準脳座標系を構築する処理手続きや環境は未だ十分に整備されておらず、一般的な研究手法として確立していない。本研究では、共焦点レーザ顕微鏡画像をベースに脳・神経系の形態情報を統合・共有・比較するための標準脳構築の手続きとそのプロセスを支援するソフトウェア環境の開発を目的に研究を実施した。本研究では、細胞内染色された神経細胞形態について、画像フィルタリング、マスキングなどの前処理による背景組織からの分離処理方法を提案し、さらに、細胞形態の自動追跡ソフトを用いたセグメンテーション方法を利用し、神経細胞形態をSWC形式出力するソフトウェア環境を構築した。SWC形式で細胞形態を記述することで、様々なビューア、解析ソフトにおいて利用可能であり、神経細胞形態を蓄積、利用する環境が整った。一方、標準脳の構築、脳画像から抽出された脳領域、神経細胞形態などをレジストレーションする方法として、剛体、非剛体変換を活用したプロトコルを確立した。構築したプロトコルについては、AINI2016のチュートリアルセッション(招待講演)において、その有効性、手順などを紹介した。また、その手法については、「昆虫の脳をつくる」(神崎亮平編)において解説しており、現在、この書籍の出版手続きを進めている。細胞形態のモデル記述手法については、同様の形態を持つ樹木の根系構造を再構築にも活用することができ、他分野における応用も進めた。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 4件、 招待講演 2件)
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