研究課題/領域番号 |
25330345
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 東北学院大学 |
研究代表者 |
牧野 悌也 東北学院大学, 教養学部, 准教授 (90250844)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 嗅覚システム / 神経ネットワーク / 情報表現 / 匂いコーディング / 時空間パターン |
研究概要 |
スニッフィング sniffingとは哺乳類が匂いをくんくんと嗅ぐ行動である.スニッフィングは随意運動でありそのリズムは行動コンテキストに応じて意識的に制御されている.嗅覚情報処理ネットワークである嗅球/梨状皮質の神経細胞がスニッフィングリズムに同期した活動を示すことは古くから知られてきた.これまで,嗅覚における計算論的研究においてリズム入力を匂い情報表現に利用したモデルは存在するが,リズムの意識的制御が匂い情報表現にとってどのような機能的・認知的意味を持つかは議論されていない.本研究では,スニッフィングリズム制御を,匂い情報を異なる分解能でとらえるためのアクティブな活動と捉え,システム自身が生成する時間的リズムを積極的に利用し匂いの情報表現を多形化するモデルを提案・構築する. H25年度は救急モデル構築の第一段階として,Izhikevich神経モデルを用い,スニッフィングリズムに同期した閾値下のバイアス入力の有無と,入力強度に依存した神経発火タイミングの関係をもでるシミュレーションにより検討した.結果から,匂い入力に相当するステップ入力のオンセットからの神経応答の発火潜時はリズミックなバイアス入力により制御可能であることが分かった.各糸球体からの入力強度が強い順にMT細胞は発火し,嗅球での匂い情報表現はこの時空間的活動パターンとなる.周期的バイアス入力の存在する場合,発火潜時が入力強度に依存して線形に減少する領域が広く確保できる.これにより,同一の周期的バイアス入力条件においては,嗅球全体としての活動パターンは匂いの刺激強度に依存しないことになる.これは,嗅球における情報表現が濃度不変性を有すし,バイアス入力の周期,振幅,オフセットの変調により,ネットワークとしての発火順序を保存しながら,情報表現の時間的特性を自由に制御すること可能であることを意味する.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書に記したH25年度計画に即して,脳における匂い情報表現の多形性制御という視点から,スニッフィングリズム変調による情報表現の制御可能性を,神経細胞モデルのシミュレーションにより検討し,呼吸リズムをアクティブに制御することで物理化学的に同一の匂いからでも様々な情報を取り出すことができる可能性を示すことができたため.
|
今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り,H26年度以降は,嗅球ネットワークモデルシミュレーションと高次ネットワークのモデル構築を進めて行く.
|
次年度の研究費の使用計画 |
新規に購入した計算機シミュレータ(MacPro)は本来2013年9月ごろ購入予定であったが,発売が遅れたため,購入時期が2014年1月となってしまった.このため,当初モデル構築と同時に行う予定であったシミュレータ環境の整備が年度ないにできなかった. 繰り越し分は早急にこれらを執行し,当初予定通りH26年度分の予算も執行する予定である.
|