研究課題
スニッフィング sniffingとは哺乳類が匂いをくんくんと嗅ぐ行動である.スニッフィングは随意運動でありそのリズムは行動コンテキストに応じて意識的に制御されている.嗅覚情報処理ネットワークである嗅球/梨状皮質の神経細胞がスニッフィングリズムに同期した活動を示すことは古くから知られてきた.これまで,嗅覚における計算論的研究においてリズム入力を匂い情報表現に利用したモデルは存在するが,リズムの意識的制御が匂い情報表現にとってどのような機能的・認知的意味を持つかは議論されていない.本研究では,スニッフィングリズム制御を,匂い情報を異なる分解能でとらえるためのアクティブな活動と捉え,システム自身が生成する時間的リズムを積極的に利用し匂いの情報表現を多形化するモデルを提案・構築する.H27年度はIzhikevich神経モデルにより嗅球ネットワークの出力細胞であるMT細胞をモデル化し,これと一次遅れ素子でモデル化した抑制性介在細胞モデル2タイプ(糸球体内抑制タイプ,糸球体間抑制タイプ)を組み合わせることで糸球体モジュールを構成した.糸球体間の抑制は,最も強いものが勝ち残る性質をネットワークに与え,糸球体内抑制は定常入力に対してリズミックな応答を生成する効果を持つ.これが組み合わさることで,ネットワークの創発的性質として糸球体への入力強度順にMT細胞が発火し,このパターンは持続的に繰り返すことを確認した.ここにスニッフィング入力を導入することで,パターンは一過性となり,糸球体入力が入力強度順に活動するMT細胞の一過性時空間パターンとしてコードされる.さらにスニッフィング入力の強度や時間的構造を変えることで,匂いの情報表現は多形化し,かつ,自在に制御可能であることを明らかにした.
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日本バーチャルリアリティ学会研究報告
巻: Vol.21, No.SBR-1 ページ: 1-6