研究課題/領域番号 |
25330346
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東北学院大学 |
研究代表者 |
菅原 研 東北学院大学, 教養学部, 教授 (50313424)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | トゲオオハリアリ / リズム / 同期 / 引き込み |
研究概要 |
本研究はアリの社会性を物理学的視点に基づいて解釈することを目的とするものである。個体の局所的な相互作用からどのように集団としての適応的な振る舞いが生まれてくるのか、その関係を具体的に探るために、特にトゲオオハリアリに見られる集団行動のひとつである「パトロール行動」に着目し、個体が有するactive-inactiveのリズム周期との関連性を重視した研究を行うものとする。本年度実施した研究の成果は以下の通りである。 ①安定した実験環境を整備。これまで使用してきた実験環境は外的要因によって変動が生じやすいものであったため、実験条件を整えることに多くの時間と労力を要していた。研究効率の大幅な向上を狙い、安定した飼育環境ならびに実験環境を実現すべく、あらたな設備の組み上げを行った。IT技術も駆使し、遠隔で様々な操作が行えるように環境を整えた。②自動解析システムの構築。これまで使用してきたシステムを一新し、計測精度をあげつつ、システムのメンテナンス性ならびに拡張性の大幅な向上を図った。③女王とワーカーの単接触がもたらす変化の計測。特殊な円形フィールドを作成し、そこに女王アリを単独で放置、ワーカーと一度だけ接触させる。接触の前後でのリズムの変化を計測し、その影響を考察した。④ワーカーの数と位置を固定できる特殊な実験装置を開発し、ワーカー数、密度の偏りに対する女王の行動の違いを計測した。⑤2個体の行動の数理モデル化。active-inactiveのリズムに着目し、個体の接触によって個々のリズムが影響を受ける仕組みを簡単な引き込みモデルで記述し、実験によって得られた結果と同等の特性が得られることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では「2次元空間内における行動解析」と「特殊な空間における行動解析」を行う予定であった。前者に関する実験については予定の60%程度実施したが、後者については予定の10%程度しか実施することができなかった。主な理由として、本年度は安定した実験環境に向けた整備にかなりの時間を費やしたこと、実験を行うマンパワーが不足していたことなどがあげられる。また、解析についてはこれまで使用してきた解析プログラムの性能があまり高くなかったため、解析プログラムの高性能化に注力した。このことも遅れの原因のひとつになっている。一方、次年度以降に推進する予定であった行動の数理モデル化については本年度内に多少前倒しで実施できている。
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今後の研究の推進方策 |
現時点では当初の計画に比べて進捗はやや遅いものとなっている。しかし、環境の整備が整ったことに加え、実験におけるマンパワーについても本年度に入り強化できる見通しが立ったため、研究の遅れは本年度内に挽回できると考えている。一方、計画当初にはなかったアイデアを着想し、それに基づいた新しいタイプの実験装置の開発が完了している。この装置を用いることで解明したいポイントにより明確にアプローチできる見通しが立った。また、トゲオオハリアリの生態に詳しい研究者、ならびに生物行動の数理モデル化を専門とする研究者とより一層連携する体制をとることができている。以上のことを踏まえ、遅れを取り戻すだけでなく、できるだけ前倒しにできるような姿勢で継続していく次第である。
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