研究実績の概要 |
ここ十数年で発展してきた、巨大分子に対する分子軌道計算法(Fragment molecular orbital)の実装の一つ、Abinit-MPが京に移植されており、蛋白質―リガンド共結晶の電子軌道計算のプロジェクト(FMO創薬コンソーシアム、福澤薫代表)が発足していることから、等プロジェクトに参画し、TCR-pMHC相互作用の特異性・交差反応性の原理を残基間相互作用のレベルで調べることにした。共通なpMHCを認識し特異性の高いTCRとcomplexを形成するもの(PDBID:3C5Z)と交差反応的なもの(PDBID:3C60)の2つの共結晶に関して、被提示ペプチド上P2(Q), P3(K), P5(K), P8(K)に、応答に大きな差を生じたそれぞれ7種、8種、1種、3種の突然変異を入れた構造を作成し、各構造に関してFMO計算を行った。FMO計算およびPIEDA による解析は、TCR-pMHC相互作用の解析に極めて詳細な情報をもたらした。(1) P2の変位は3C60のCDRa3の94 Thrとの相互作用にほとんど変化を来さないが、3C5Z 94 Asnに対してはかなりの変化を来す。(2) P3の変位は3C60のCDRa3の94, 95との相互作用にほとんど変化を来さないが、3C5Z 94, 95に対してはかなりの変化を来す。(3) P5 K -> Pの変位は、3C60 CDRb1 28 Asn 29 Asnとの相互作用にはほとんど変化を来さないが、3C5Z 28 Asp 29 Tyrに関しては、かなり不安定化する。(4) P8 K の変位は、3C60 CDRb1 27 His, 28 Asnとの相互作用にはほとんど変化を来さないが、3C5Z 27 His, 28 Asp に関しては、かなり不安定化する。これらの知見の一般化にはより多くの構造に関する計算が必要である。
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