研究実績の概要 |
免疫系の破綻によっておこる自己免疫疾患の一つであるリウマチ発症のメカニズムを解明するために、発症の分子メカニズムのコンピュータモデルの構築を行っている。昨年度、F759マウスと呼ばれる、IL-6シグナルの抑制物質であるSOCSの結合ができず、自然発生的にリウマチを発症する突然変異マウスのコンピュータモデルを構築した。モデルの有用性を検証するために、F759とwild-typeマウスから分離した滑膜細胞でIL-6産生速度を計測した結果とシミュレーション結果を比較した。F759マウスの方がIL-6産生量が大きい点では、実験結果・シミュレーションとも一致したが、時間経過が少し異なっていた。シミュレーション結果では、IL-6産生速度はF759, wild-typeとも時間経過とともに次第に増加していった。一方、細胞実験結果では、刺激後20時間まではIL-6産生速度はあまり変わらず、刺激後20時間後からwild-typeのIL-6産生速度が減少することによって産生速度の差が増大していた。従って、IL-6産生速度が刺激後20時間頃に減少する分子メカニズムが存在する可能性があることが分かった。また、F759マウスのコンピュータモデルの個々のパラメータを個別に変化させることによって生じる変化を比較するSensitivity Analysisを行った結果、IL-6シグナル伝達経路の方がNFkB経路よりも、パラメータ変化による全体の挙動の変化が大きいことが分かった。従って、IL-6シグナル伝達経路の方が発症に及ぼす影響が大きいのではないかと考えられる。リウマチ発症では、関節部での反応が重要であると考え、関節部でのモデル化と実験結果との比較によるモデルの改良に注力したので、胸腺におけるヘルパーT細胞分化はモデル化していない。この結果をECI2015、日本分子生物学会、日本免疫学会で発表した。
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