最終年度は、実RDFデータを用いて検索、推論、学習を融合した意味的推論の実用性・応用性の検証実験を行った。実験で実際に用いたRDFデータはWeb上に公開されているDBpedia、YAGO、Wikidataなどである。最初の成果として、帰納的学習によって、大規模なRDFデータから頻出する部分パターンやルールを発見できることが確認できた。次に、人物、ものなどの属性情報を記述するRDFデータを訓練データに用いてカテゴリを学習して、新たな人物やもののデータからカテゴリを推定する評価実験を行った。また、検索、推論と学習を融合した意味的推論の成果として、検索・推論から導けない不完全データを学習器から推定する質問応答システムを実現している。この実験の評価により、ユーザーが求める情報を推定する機能が強化できている。 加えて、自然言語文のテキストデータからオントロジーやRDFデータを半自動構築して知識ベースを拡充する2つの方法の実験を行った。1つの方法では、国語辞書のような日本語の言い回しが整っているテキストからオントロジーを半自動的に構築できている。もう1つでは、Wikipediaのテキスト文からRDFデータを半自動作成して、DBpediaのRDFデータを補完する成果を得た。この結果によってRDFデータを拡充できるので、推論と学習を融合した意味的推論の性能が強化されるだろう。しかし、自然言語テキストからRDFデータの自動構築に関しては、自然言語文の扱いの難しさからさらに精度の向上が必要と考えられる。
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