本研究では、リアルタイムに収集可能なデータを用いた信号制御によりCO2排出量の削減が可能かどうかに関して検討を行った。大きなポイントは次の2点である。すなわち、1) 理想的な信号切り替えタイミングを計算するための手法の考案、2) 収集した情報の質や量と、削減可能なCO2排出量との間のトレードオフの見積もりである。まず1つめに関しては、様々な道路環境でも利用できるロバストなシステムとするため、事前に設定の必要なパラメータ数などが少なくて済む、適応的な手法となっている事が望ましい。2つめの関しては、既存の道路情報収集インフラや、携帯電話網を用いたプローブ情報など、様々な交通情報が利用可能である。しかし、全ての車両の正確な位置や速度を網羅することは難しく、十分な精度での制御が行える事を示す必要がある。 協調型信号制御手法の設計について検討を行い、基礎的なシミュレーションを行った。その結果から、旅行時間とCO2排出量の間には比較的強い相関があるものの、信号制御の方式や交通環境によって影響が異なってくることが分かった。一方で、車両の停止回数とCO2排出量の間には交通環境に寄らず、ほぼ線形な関係が見られた。よって、信号制御の工夫によって、旅行時間の増加などの悪影響を起こさないよう、CO2排出量を削減できる可能性を改めて示すことができた。 本研究課題に関連して実施した、道路交通情報の収集の高精度化に関する研究成果について、車両から収集したデータを走行した道路のプロファイル毎に異なる手法で精緻化する手法、車両間や車両と信号機との間の相対位置関係をLED通信デバイスを用いて協調的に計測する手法、交差点での信号待ち車両数の高精度な推定を行う手法、積雪が道路交通環境に与える影響を車両から集めた情報に基づいて推定する手法について、それぞれ、査読付き国際会議(ITST 2013、2014 ICCE-TW、ICCVE 2014、ITSC 2015)で報告した。
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