研究課題/領域番号 |
25330380
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
平久江 祐司 筑波大学, 図書館情報メディア系, 教授 (20302432)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 学校図書館 / 学校図書館担当者 / 養成 / 研修 / 司書教諭 / 学校司書 |
研究概要 |
本研究プロジェクトは,学校図書館担当者(司書教諭・学校司書)の養成・研修の制度の現状と課題を検証し,急速に進展するデジタル社会を見据えた養成課程と研修についての継続的,包括的な人材育成制度の在り方を提言することを目的としたものである。今年度は,第1段階の研究である。今年度の研究計画では,文献調査と実態調査による質的な研究をパイロット的に行い,作業仮説を設定することを目的とした。文献調査では,概ね1990年代以降の日本,米国,カナダ,オーストラリアのアクレディテーションに関する文献を詳細に分析し,学校図書館専門職員の養成課程において育成すべきコンピテンシー,養成基準とアクレディテーション及び研修カリキュラムの現状と問題点等を検討した。その結果,オーストラリアの学校図書館専門職員の制度が,日本において有効な示唆を与えるものであることが示唆された。また質的研究においては,学校図書館司書教諭講習等で講義を実施し,その評価・分析を行いインストラクショナルデザインの方法論等について考究した。また,主に「トップリーダー育成のための教育の高度情報化」事業を推進する筑波大学附属駒場中学・高等学校の図書館担当者と連携し,デジタル化を進める教育現場における学校図書館のサービスの在り方について調査した。これらの事前調査等を踏まえ,本研究プロジェクトの目的を達成するための作業仮説を設定し,今後の研究への展望を明らかにした。ただその一方で,前述の諸外国の先進的な事例の調査については当初の実施計画を変更し,次年度に実施することにした。また,「学校図書館担当職員の役割及びその資質の向上に関する調査研究協力者会議」(文科省)の委員として,主に国内の学校図書館担当職員の養成・研修制度において養成すべき資質・役割等について調査研究し,その成果の普及啓蒙に注力した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究プロジェクトは,学校図書館担当者(司書教諭・学校司書)の養成・研修の制度の現状と課題を検証し,急速に進展するデジタル社会を見据えた養成課程と研修についての継続的,包括的な人材育成制度の在り方を提言することを目的としたものである。今年度は,研究の第1段階として,文献調査と実態調査による質的な研究をパイロット的に行い,研究全体についての作業仮説を設定することを目的とした。今年度の研究活動は,主に(1)日本及び米国,イギリス,カナダ,オーストラリア等の英語圏の調査報告書・研究論文を基に文献調査を行い,本研究の核心にあるコンピテンシー,スタンダード,アクレディテーション制度等について研究をしたこと,(2)筑波大学附属駒場中学・高等学校,清教学園中学・高等学校の訪問調査や松江市,横浜市,荒川区における実践報告等分析により,学校図書館担当者の職務内容・資質について調査分析を行ったこと,(3)「学校図書館担当職員の役割及びその資質の向上に関する調査研究協力者会議」(文科省)の委員として,主に国内の学校図書館担当職員に必要な資質・役割等についての今後の在り方についてのビジョンを検討し明確化したこと,等の3つの側面から行った。 これらの3つの側面からの調査研究の成果を通して,本研究プロジェクトの (1)現代の学校図書館専門職員の養成課程で育成すべきコンピテンシー(能力)の解明,(2)デジタル社会における学校図書館の職務の変化の養成内容への影響の解明,(3)学校図書館専門職員の養成課程とそれと継続性と包括性を持つ研修制度のモデル構築の3つの研究課題について,パイロット的な作業仮説を設定することができた。また,これらの点について,研究発表等によりその成果を公表することができた。ただ,海外の先進事例についての訪問調査等の実施については当初の予定通りに実施することができなかった点が課題として残った。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究プロジェクトは,学校図書館担当者(司書教諭・学校司書)の養成・研修の制度の現状と課題を検証し,急速に進展するデジタル社会を見据えた養成課程と研修についての継続的,包括的な人材育成制度の在り方を提言することを目的としたものである。 本研究プロジェクトの第1年目は,(1)現代の学校図書館専門職員の養成課程で育成すべきコンピテンシー(能力)等の解明,(2)デジタル社会における学校図書館の職務の変化の養成内容への影響の解明,(3)学校図書館専門職員の養成課程と継続性と包括性を持つ研修制度のモデル構築の3つの課題についてパイロット的に調査研究し,本研究プロジェクトの全体像と研究仮説を明確にした。これらの成果を基に, 2年目の研究は,主に実態調査を中心に進めていく。実態調査の進め方は,前半は調査実施のための準備期間に当て、調査の全体計画、調査対象者への連絡調整を行う。実態調査は主に訪問調査によって行う。訪問調査では,海外の訪問調査と国内の調査を行う。海外の訪問調査では、米国,カナダ,豪州の3国の図書館協会及び,学校図書館専門職員の養成を行っている図書館学校のカリキュラムやアクレディテーション制度等についての現状調査,学校図書館担当者への聞き取り調査等を行っていく予定である。国内調査においては,司書教諭と学校司書に対して養成・研修を実施している都道府県教育センター,市の教育委員会の指導主事,学校図書館支援センター担当職員等を中心に,研修の計画や科目等について訪問調査等を実施する。そして,これらの実態調査と関連文献の調査についての結果を整理・分析し,学会発表及び調査論文を作成し投稿する。なお,海外の訪問調査数については,質的調査を中心に行うために多くの調査対象を設定する必要性は低いと考えている。
|
次年度の研究費の使用計画 |
今年度は,本研究プロジェクトの目的である「学校図書館担当者(司書教諭・学校司書)の養成・研修の制度の現状と課題を検証し,急速に進展するデジタル社会を見据えた養成課程と研修についての継続的,包括的な人材育成制度の在り方を提言すること」と非常に関連性が強くかつ重要性の高い「学校図書館担当職員の役割及びその資質の向上に関する調査研究協力者会議」(文科省)の委員(任期:2013年8月1日~2014年3月31日)として,主に国内の学校図書館担当職員の養成・研修制度において養成すべき資質・役割等について調査研究し,報告書の作成とその成果の普及啓蒙に注力した。そのため,研究1年目に計画していたイギリス,カナダ,オーストラリア等の国々の学校図書館専門職員の養成・研修等に関わる機関への訪問調査ができなかったこと,及び日本の同様な機関への訪問調査数も予定していたより少なかったことによる。 研究1年目に計画していたイギリス,カナダ,オーストラリア等の国々の学校図書館専門職員の養成・研修等に関わる機関への訪問調査,及び日本の同様な機関への訪問調査を実施する。また,学校図書館法の改正を見据えて,新たに学校図書館担当者(司書教諭・学校司書)の養成・研修の制度の現状と課題に関して国内から講師を招聘し研究会を2回~3回程度企画し,開催する。これらの訪問調査と研究会の開催とそれに関連する経費が主な使途となる。
|