研究課題/領域番号 |
25330382
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
松村 敦 筑波大学, 図書館情報メディア系, 助教 (40334073)
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研究分担者 |
宇陀 則彦 筑波大学, 図書館情報メディア系, 准教授 (50261813)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 絵本推薦 / 子どもの好み / 子どもの反応 / 発話 / 笑い / 視線 / 読み聞かせ / ビデオ分析 |
研究概要 |
本研究は,子どもの好みを多面的に取得・利用し絵本を推薦するためのシステムを構築することを目的としている.本年度は,前提となる子どもの好みの定義のための調査と,その取得方法の検討を行うことを計画し実施した.成果は次の通りである. まず,1対1の読み聞かせ場面をICレコーダにて記録し,従来の子どもの好み情報として発話に着目し予備分析を行った.次年度の電子書籍実装のための実験用データを多く集めることを同時に行うため,幼稚園/保育園における読み聞かせを実施した.対象は年長児66人,読み手はボランティア学生3人である.なお,そのうち6人についてはビデオ記録の許可を得て撮影を行い,表情の情報を取得した. 次に,集団での記録可能性を検討するために,集団に対する読み聞かせの記録も行った.対象は,年長年少児96人である.それぞれ2回ずつの読み聞かせを行い,その様子を個人個人にICレコーダーを持たせることで取得し,同時に正面,左右の3台のビデオカメラで撮影することにより記録をとった.分析は,ビデオデータから視線および表情を取得し,発話は主にICレコーダから取得し,全て時間とともに記録することができた.しかしながら,30人以上の大人数の場合のICレコーダの判別が難しく,この部分は未着手である.以上により,次年度実施予定の反応情報の自動記録手法のための基礎データを構築できた. 3つ目は,子どもの日常生活に現れる読み聞かせ以外の好み情報として「遊び」をアンケート項目に盛り込み調査した.有効な回答を361人から得て,読み聞かせより重視される遊びとして「外で体を使って遊ぶ」「テレビ・ビデオを見る」「おしゃべり」「ごっこ遊び」「ゲーム」などがあげられた.また,10名の親にインタビューを行い,さらに詳細に「日曜朝のアニメ」「大岡越前」「ミニカー」「ピアノ」など具体的な好み情報も得られた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
次年度に電子書籍型の絵本の実装を行うための予備データを得ることも考慮に入れて,読み聞かせ実験を進めることが重要と判断し,より多くの子どもの記録データの収集を優先したことが大きな原因であり,他の作業が遅れている. 読み聞かせビデオによる子どもの反応分析は終わっていない.ただし,のべ252人分の個人/集団での読み聞かせ記録を得ることができ,集団での読み聞かせ記録から笑顔,視線,発話を取得可能であることを確認できたことは,データ収集方法の改善として大きな成果である. 一方,生活に根ざした子どもの好みについては,まだ,発達心理学,保育学の調査を終えていないため,「遊び」に着目したアンケート項目から傾向を把握可能かを予備調査したにとどまった. 絵本の主題分析は,今年度の実験に利用した「そらいろのたね」「変身トンネル」「変身おばけ」の3冊は1名の作業が終了しているが,クロスチェックがまだ済んでいない.
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今後の研究の推進方策 |
まず,26年度のはじめに25年度実験に使用した絵本の主題分析と生活に根ざした子どもの好みの定義と調査を進める.これは,アルバイトを使用して早急に進める. 次に,手つかずであった子どもの質問に着目したソーシャル絵本推薦システムを稼働し,実験環境として利用することにより,子どもの質問を収集し,絵本との結びつきを分析するためのデータを取得する.ここまでを26年度7月までを目処に実施する. 26年度実施計画中の電子書籍型絵本の開発では,OKAO Visionを利用した視線抽出と表情抽出を行うが,既にデモ版を利用して,25年度撮影したビデオデータを対象とした予備分析を開始している.ただし,OKAO Visionの性能の限界から視線の抽出は,これまで目指していた電子書籍中のどの部分を見ているかまでの精度を得られないことが明らかになってきた.そのため,視線をどのレベルで活用するかの検討も踏まえ,場合によっては除外することも考える.一方,OKAO Visionの表情抽出は,笑顔以外にも,悲しみ,怒りなども判定可能であるため,この機能の利用可能性を検討しつつ進めていく.
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次年度の研究費の使用計画 |
26年度使用額のうち,10万円程は3月の出張旅費として執行される予定である.残りの15万円程が実質の26年度使用額であり,その内訳は,主に人件費・謝金の項目である. これが生じた理由は,読み聞かせ実験の実施が,30組から6組に減ったことと,ボランティアによる読み聞かせのため,謝金が発生しなかったことによる.また,絵本の主題分析作業が途中であり,その謝金が発生しなかったことによる. 絵本の主題分析作業については,26年度の前半に作業を行い,謝金として執行する予定である.一方,読み聞かせのための謝金については,引き続きボランティアベースで行いつつ,親子の読み聞かせを実施した時には,謝金を支払うことで執行する.残った費用は26年度の電子書籍の開発費に補充する計画である.
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