研究課題/領域番号 |
25330382
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
松村 敦 筑波大学, 図書館情報メディア系, 助教 (40334073)
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研究分担者 |
宇陀 則彦 筑波大学, 図書館情報メディア系, 准教授 (50261813)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 絵本推薦システム / 子どもの好み / 発話 / 笑い / 視線 / 読み聞かせ / 演じ分け / 読み手 |
研究実績の概要 |
本研究は,子どもの好みを多面的に取得・利用し絵本を推薦するためのシステムを構築することを目的としている. 本年度は,まず,子どもの好みが読み聞かせ時の読み方によって変わるかどうかを調べた.読み聞かせ時の読み方で,特に影響を与えると考えられる「演じ分け」に着目し,演じ分けをした場合としなかった場合で,絵本に対する印象が変わるかどうかを実験的に検証した.4~6歳児30名を対象に演じ分けして読み聞かせる群と演じ分けせずに読み聞かせる群に分け,両者で登場人物に対する好み,登場した遊びに対する好みに差が出るかを確認した.その結果,登場人物については,演じ分けをして読み聞かせた群の方に特定の登場人物を嫌う傾向があることが示された.一方,登場する遊びについての好みには,群間で差は無かった.このことは,読み方によって子どもの好みが変わる可能性を示しており,特に演じ分けが大きく影響する登場人物に対する印象が変わることが示唆されている.したがって,本研究が目指す推薦システムで子どもの好みを正確に取得するためには,子ども側の反応のみではなく,読み手の読み方もあわせて取得する必要があることが分かった.なお,30名のうち許可を得られた11名の映像を分析したところ,子どもの反応に大きな違いはなく,実験という環境で検証することの難しさが明らかになった. 次に,子どもの好みを読み聞かせ時の反応として取得する際,読み手の違いで反応の違いがどの程度現れるか検証した.親子での読み聞かせ場面を32冊分収録し,その表情,反応を見た.その結果,子どもの反応は柔らかく喜ぶ様子などを見ることができ,好みの取得には親子での読み聞かせの重要性が示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験計画が遅れている理由は,一つには,読み聞かせ時の子どもの好みの調査に時間がかかったことが挙げられる.特に,読み手の読み方に視点をおいて調査することが想定以上に時間がかかった. もう一つは子どもの反応の自動取得可能な電子書籍絵本の実装面で,表情,視線をタブレットでは精度よく扱うことができない可能性が高くなった点である.そのため,予定していた手法,環境を変更して,別のソフトウェアを利用して実装を行うか,先行研究で行われているような大型ディスプレイを対象とした実装に切り替えるか,を再検討する必要が生じたことである.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は,絵本推薦システムの実現までが目標である. 27年度前半は,やり残しているソーシャル絵本推薦システムと子どもの反応の自動取得可能な電子書籍絵本の実装をまず進める.特に,電子書籍絵本の実装では,問題となっている子どもの反応を取得するソフトウェアを選定することが最初の課題である.ただし,視線の取得により絵本内の何処を見ているかを獲得するには精度が問題となっているため,大型ディスプレイでの実装に切り替えるか,大きな視線移動による集中力の取得のみに視線の利用を変更するか,で検討し直す必要がある.笑顔の取得および声の取得は実現の可能性は高いので実装を進める. また,これらと平行して,最終的な絵本推薦システムの設計を行う.27年度後半は,絵本推薦システムを実装し,評価実験を行う.26年度の成果より,読み手が大きな要因となることが分かっているため,読み手は親あるいはよく知った人で評価実験を行うことを予定している. なお,年間を通して,子どもの好みの調査,および絵本の主題データベースの充実は継続して行う予定である.特に絵本の主題データベースは,絵本推薦システムの実装の一部として実現し,ソーシャル絵本推薦システムによるデータ収集と連携させる.それと同時に,鳴子教育大学附属図書館の「子どもの心を理解する絵本データベース」を利用することを試みる.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は,電子書籍型絵本の設計の遅れとソフトウェアの精度の問題で,当初開発に使用する予定であった表情抽出と視線抽出のソフトウェアを購入しなかったためである. また,今年度は絵本の主題分析作業に着手できず,そのための謝金が残っている.
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次年度使用額の使用計画 |
表情抽出と視線抽出は,当初検討していたソフトウェア以外の選択肢も検討し使用する.ただし,フリーソフトウェアの利用も視野に入れているため,残った場合は,読み聞かせ調査,推薦システム利用実験での謝礼に組み込む. 絵本の主題分析のための謝金は,年度前半で使用する.
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