H25年度は、分析対象の校訂本数を限定し、数理分析の方法論研究に重点をおいたプロトタイプ的研究を行った。具体的には、先攻研究において顕著な違いが知られている4つの校訂本に限定して、テキストの差異を計る計量分析の手法研究に重点をおいた。扱う校訂本は、Nestle-Aland27版の他 に、Aland(1995)らの本文批評研究をもとに、Nestle-Aland 版に共通する箇所を最も多く持つWestcott-Hort(1881)版、逆に、最も多くの異本箇所があるvonSonden(1913)版、さらに、本文批評研究ではあまり取り上げられることは少ないが、翻訳聖書に多大な影響を及ぼした校訂本であるScrivener(1894)版を選定した。 テキストの異同箇所を特定する計量分析に関しては、ミクロ・マクロ的な視点から、共通性の多い文章に埋もれている差異を効率よく抽出するための方法論についての調査を行った。ミクロな視点の分析には、対数尤度比検定などの手法を適用して、校訂本の特徴語彙の抽出を試みた。個々の特徴語彙は、出現する本文を逐次参照しながら語彙の使用傾向の違いを観察し、校訂本間の比較を行う。他方、節やn-gram 単位などで小単位に区分されたテキスト情報から、単語の類似度計算を行った。分析結果に基づいた校訂本の違いを視覚化するために、R言語のShinyパッケージを使用して、Webアプリケーションの構築に着手した。
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