本年度は、次の四点の研究を進めた。第一に、前年度に引き続き、質問紙調査から得られた内容を深化させるため、回答機関の中から1機関に対して聞き取り調査を実施した。第二に、前年度に実施した聞き取り調査も含め、聞き取り調査で得られた内容をすべて文字に起こし、内容を整理した。第三に、前年度に実施した質問紙調査と、この調査を深化させるために実施した聞き取り調査をもとに、専門図書館職員のキャリア形成のための環境整備のあり方を検討した。第四に、研究成果に基づく講演(国立国会図書館での利用者サービス部での研修)と論文(『情報の技術と科学』『図書館雑誌』)の執筆を行った。 本研究では、これまで、専門図書館職員のキャリア形成のための環境整備のあり方を明らかにすることを目的に研究を進めてきた。具体的には、まず、専門図書館職員は、みずからに求められる知識・技術を、どのように習得し、向上を図っているのかを明らかにした。具体的には、聞き取り調査によって、被調査者の考え方、取り組みの状況(教育訓練や自己啓発の実施状況)、今後の被調査者の考え方、取り組み方を把握し、質的研究法によって分析した。つぎに、親機関は、専門図書館職員の人材育成に対して、どのような方針を取っているのかを明らかにした。具体的には、質問紙調査によって、人材育成の方法、専門図書館職員に求められる知識・技術の開示、自己啓発の支援、能力評価の実施などの状況を把握し、量的研究法によって分析した。最後に、専門図書館職員のキャリアを体系的に捉えるため環境整備のあり方を提示した。
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