研究課題/領域番号 |
25330390
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研究機関 | 佛教大学 |
研究代表者 |
松戸 宏予 佛教大学, 教育学部, 准教授 (80584482)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 大学図書館 / 障がいサービス / イングランド / 特別支援 |
研究実績の概要 |
本研究は,英国の特別なニーズをもつ学生に対して大学図書館が行う特別支援について,取組みの背景,実際の取組みと仕組みを検証し,わが国の大学図書館の特別支援への示唆を得ることを目的とする。本年度は,これまでの成果を還元するため,レポート(2017年2月調査)と,論文2本としてまとめた。レポートのテーマ設定は,① 政府の障害学生手当の変更に伴う,訪問大学図書館の取り組みの影響と柔軟な対応策,② 再編成された高等教育支援機関の1つであるJISCの後方支援の現状と課題,③ 特別支援に特化した大学図書館研究会CLAUDの活動と位置づけである。 概要:① 9大学図書館の場合,障がい学生の支援に支障をきたす影響はみられなかった。むしろ,障がい学生手当の変更をきっかけに,全学的な検討を通して,サービスの見直しを図っている。そして,特化した特別なサービスではなく,大学で提供される一般的な他のサービスの中に含まれるタイプのサービスへと変化している。大学全体の障がいサービスの向上につながっていた。 ② JISCとの共同プロジェクトでは,電子図書の評価を行っている。これは,大学図書館員が分担して電子図書のプラットホームを評価したものである。この結果は,JICSのサイトを通じて公開していた。大学図書館担当,大学図書館研究会,JISCによる相互の連動を再認識した。 ③ また,特別支援に特化した大学図書館研究会が北東部,南西部,ウェールズ以外に,北部,中部,ロンドン市内でも発足されていた。担当者間のネットワークがあることは,面接中に他大学の担当者名が挙がることからも確認できた。これはJISCと大学図書館員との間においても同様である。これらのネットワークを利用して,担当者間のそれぞれの工夫が,大学図書館研究会の1日研修や,メーリングリストを通じて,他大学にも広まっていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2015年度から2017年度にかけての課題は以下の通り。( )内は、還元方法(レポートあるいは、論文作成)を示している。 2015年度:特別支援の実践における問題や課題についての検証(投稿論文1)。2016年度:大学内における障害者サービス部,そして, 外部の支援組織団体と大学図書館における連携効果の検証(投稿論文2, レポート②)。2017年度:支援を行ううえでの大学図書館の研修の内容と方法の検証(レポート③)。レポートは2017年2月~3月にかけて行った面接調査やCLAUDの1日研修の参加をもとに,3本にまとめた。3件のレポートを,英文翻訳し,英国の面接協力者に添付ファイルでメールを通して送付済(2018年3月)。 2本の投稿論文の結果: 2016年度の課題に対して,日本図書館情報学会で口頭発表した内容をもとに論文を2017年6月に投稿した「英国の大学図書館における特別支援の問題とコミュニケーションチャネルとの関連性:相談・連携・研修に着目して」。しかし,和文の査読結果に応えていくなか,論文そのもののコンセプトを変更せざるを得なくなり,和文を取り下げた(2017年10月)。一方,2015年度の課題に対して,英国の専門雑誌New Review of Academic Librarianship(査読有)に「Trends in support for students with Special Educational Needs in UK university libraries」という題目で投稿した(2017年12月)。その後,修正が求められ,再度,修正したものが受理された(5月15日)。つまり,1英文は,受理されたものの、1和文は、掲載に至らなかった。このことから、年度の課題を検証,口頭発表,関係者への報告,論文作成と段階を踏んでいるものの、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2017年10月に取り下げた論文「英国の大学図書館における特別支援の問題とコミュニケーションチャネルとの関連性:相談・研修・協働に着目して」を再度,査読者のコメントを確認したうえで,統計面をみなおす。査読や修正に時間がかかることを想定した場合,佛教大学(勤務校)の『教育学部論集』に応募することも選択肢の1つとする。 コンセプトを変更して、現在『英国の大学図書館における特別支援担当の意識と方略: コミュニケーションチャネルとしての相談・研修・協働に着目して』をまとめている。この論文についても,投稿する。 なお,前述した投稿中の論文も含めて,2013年度から2017年度にかけて取り組んだ論文を単行書としてまとめていく。このため,現在,ミネルヴァ書房に交渉している最中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
英文査読の結果,修正したうえでの提出となり(4月18日締切),成果の提示が2018年度にまたがると判断した。万が一のため,再応募に備えて,校正費として,36861円を残した。
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