研究課題/領域番号 |
25330393
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 天理大学 |
研究代表者 |
山中 秀夫 天理大学, 人間学部, 教授 (60309523)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 日本古典籍資料 / 研修プログラム / 能力開発 / 人材育成 / ワークショップ / 国際研究者交流 / 多国籍 |
研究概要 |
貴重な文化遺産である日本古典籍資料は,日本を中心に世界中の機関で分散保存されている。これらの資料を広く日本文化研究に活用するには,どの機関にどのような資料があるかという学術情報流通基盤を整備する必要がある。この事業を推進するために重要なポイントの一つは,資料所蔵機関が適切な目録情報を作成・提供できることであり,その業務を遂行する人材が揃っていることにある。本研究ではこの業務の遂行ができる人材育成・能力開発のプログラムを考究している。 今年度は,平成19-21年に開催した「天理古典籍ワークショップ」の経験をもとに,「Phase2」を,平成25年6月11日から20日までの10日間開催した(山中は日本代表実行委員)。北米・欧州・オセアニアから専門職20名が参加し,週末も含めて約60時間の研修プログラムを受講した。研究協力者とともに,限られた時間内で効果的な研修プログラムはどのようなものかを念頭に検討し,実施した。機関最後に行った参加者との研修実施についての検討会,並びに後日回収したアンケート,さらに実施補助スタッフからの意見を集約し,「Phase2」の検証を行った。 ワークショップ実施にあたって本学図書館所蔵資料をもとに,研修教材を作成した。しかし学習支援システムには多様な例として本学所蔵資料以外の教材も搭載する必要がある。NACSIS-CATに蓄積された日本古典籍資料(漢籍も含む)約7万件の分析結果も含めて,他機関に所蔵する関連資料の調査を行っている。 他方,従来から図書館情報学関連の専門職育成プログラムも多く実施されている。多様な機関で行われている現職者対象の能力開発研修等で利用されている刊行資料から,例えば,参加者の知識・技能レベルの基準設定や実施期間,研修内容,研修方法,研修後の評価方法,学習支援のためのシステム及び教材などの調査を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の主たる活動である「天理古典籍ワークショップPhase2」は,当初の予定通り20名の在外専門家を対象に研修プログラムを実施することができた。併せて,在外の研究協力者との意見交換も進めることができた。教材の作成,記録の作成も予定通り行うことができたと考えている。しかしながら,対象となった教材は,天理図書館所蔵資料に限られているため,時代や分野を考慮しながら,データを検証して順次拡充を図っている。この点の達成度は,基礎レベルとして充分か否かは,現状でははかりかねている側面もある。なお,本ワークショップに関し,学術雑誌『ビブリア』140号に開催の経緯並びに実施内容,および課題についてまとめた。また,西日本図書館学会において前回(2007~2009年開催)と本ワークショップを,期間内で目指した点,時間数,講義内容と実習内容の視点から比較し,結果を口頭発表を行った。さらに同学会誌に投稿し掲載された。 本研究の関連する図書館情報学関連の分野だけでなく,範囲を拡大して広く行われている人材育成・能力開発のための研修方法や成果の収集は進展している。これらの成果をどのように,本研究分野に取り入れるかは今後の課題である。 当初予定していなかった内容として,情報資源組織化の基準・規則の世界的な変化がある。図書館界標準規則の変更は,日本古典籍資料の組織化に関する基準・規則に対しても大きな影響がある。年度後半から,新基準の日本古典籍資料への適用していくための検討を始めた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で当初目指す技能レベルは基礎的なものである。日本古典籍資料の目録化に際し,見るべき視点は非常に多様であり,調査すべき参考資料も多い。そのすべてをカバーすることは難しい。最も基礎的な資料を見る目,書誌情報作成上の基本的な態度を身につけるための内容と学習するために必要なデータ・教材をさらに充実させる。今後,段階的に書誌情報を採録する上では複雑な教材をもとに,必要なデータや関連資料を時代や分野を分けながら順次搭載することで,広範囲な日本古典籍資料を対象とした書誌情報の採録が可能な技能育成のtを徐々に育成することができると考えている。 平成26年度は,プログラム内容の改善と検証を行う。平成25年度のワークショップで得られた経験と問題点の指摘を受けて,研修すべき内容の見直しと研修の方法の改善と検証を行う。検証には,ワークショップ参加経験のある在外専門職員のほか,国内外の受講未経験者にも依頼し,プログラム構成や提示教材の問題点を検討する。その際,技能や経験,保有知識のレベルを考慮して,提示すべきプログラムや教材を研究する。 対象とする日本古典籍は膨大で非常に多様である。基礎的な段階から順次搭載していくが,技能育成プログラムに適応したシステムの構築を目指す。逐次,プログラムの拡充に必要な教材,また,メタ情報を採録する上では複雑な資料を取り扱うために必要な学習支援教材も搭載し,将来的に自習システムとしての機能も保持できるようなシステムを指向する。その際,既存の研修成果を広く取り入れることを考えている。 書誌情報作成の基準等が見直されていることを考慮し,従来の採録基準・規則との比較検討も行い,日本古典籍資料の規則としての適用についても併せて研究を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
旅費について,予定通り2名研究協力者を招聘し,本学で検討会およびワークショップへ参加した。ワークショップで使用した教材を再構成し,記録と共に参加者に後日配布をする予定で予算申請を行った。教材作成等については,ワークショップスタッフの協力を得ることができ,また,再構成も研究代表者が自ら行うことによって,当該作業に対して臨時雇用せずに遂行できた。しかしながら,当該作業は年度末まで要し,作成・再構成した教材並びに記録の送付は次年度を予定している。 併せて,再構成した教材を今ワークショップ参加者に提示し,検討を行う機会を逸したため,旅費に残余が生じた。 前年度までに作成した,教材および記録等を参加者に送付する。現行教材を拡充・再構成した新教材に,さらに映像等の組み込みも今後考慮し,前年度までの成果に付け加えていく予定である。そのために取り扱いの映像を撮影し,解説を加える編集を行う。研究協力者に支援を得て,教材として加える資料のデータ収集も行い,新教材の評価を得るべく,今年度内に昨年度ワークショップの主要参加者を訪問し,新教材使用後の検討を行う。 前年度より研究内容に加えた,資料組織化の国際的標準の変更について,現状を調査するため,国際図書館連盟(IFLA)主催の世界図書館情報会議において情報収集と研究者との交流を行う計画である。
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