研究課題/領域番号 |
25330393
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研究機関 | 天理大学 |
研究代表者 |
山中 秀夫 天理大学, 人間学部, 教授 (60309523)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 日本古典籍資料 / 研修プログラム / 能力開発 / 人材育成 / ワークショップ / 書誌記述規則 / RDA |
研究実績の概要 |
貴重な文化遺産である日本古典籍資料は,日本を中心に世界中の機関で分散保存されている。これらの資料を広く日本文化研究に活用するには,どの機関にどのような資料があるかという学術情報流通の基盤整備をする必要がある。この事業を推進するために重要なポイントの一つは,当該の資料(群)を所蔵する各機関が適切で有意な目録情報を作成・提供することである。そのためには,目録作成業務を担当する知識とスキルを備えたスタッフが存在していることが前提となる。本研究では,業務を担当するスタッフに必要な知識とスキルのある人材の育成と能力開発のためのプログラムを考究することにある。 今年度は,平成25年度に実施した「天理古典籍ワークショップ Phase 2」のプログラムの見直し,ことに当該プログラムのために作成したテキストや教材の内容の見直しと検証および拡充に重点を置いて研究を進めた。教材については,近年刊行されている関連書籍を収集して採録されている日本古典籍資料の研究成果の収集なども行った。 また,国立情報学研究所が提供して「CiNii Books」に登録されているデータのから,対象となりうる資料のデータを収集し,日本古典籍資料の目録データとしての課題に関して,現行規則(NCRおよびNACSIS-CATコーディング・マニュアル)との関連について,採録上の課題を規則・基準の観点からの検討を継続して行った。 併せて,計画当初予定していなかった内容として,書誌データ採録基準の変更スケジュールが公表されたことに伴い,新基準の日本古典籍資料への適応のための具体的な検討と,世界的な動向把握のために国際図書館連盟主催の世界図書館情報大会および情報資源組織化に関するサテライト会議に出席し,研究者との交流並びに情報収集を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究内容のうち,平成25年度に実施した「天理古典籍ワークショップ Phase2」のプログラムのために作成したテキストや教材の内容の見直しと拡充について,教材の画像の再録や拡充のための資料探索は進めることができたものの,日本古典籍資料の基本的な材料としての適切性についての検証は充分に行えたとは言い難い。また,内容的に付随的な位置づけだはあるが予定していた日本古典籍の日常の取り扱いに関する箇所の教材作成ができていない。そのため,ワークショップ主要参加者への教材(中間版)の送付は行わなかった。 他方,近年の書誌データ採録基準の変更に関する研究については,新基準の日本古典籍資料への適応する際の基本的問題点の検証を行った。加えて,世界的な動向把握のために国際図書館連盟主催の世界図書館情報大会に参加し,西洋古典籍における現状課題を知るための古典籍関連部会,並びに図書館情報学関連の人材育成関連の部会に参加し,人材育成の動向の把握につとめ,多くの情報収集と関係者との交流をはかることができた。当該大会の参加に先立ち,新基準の適用に関するサテライト会議に出席し,米・英などの英語圏以外の国として,開催国ドイツをはじめ,フランスやイタリア,中国などの適用の現況および課題について多くに情報を得ることができた。 新基準に関する国内外で得られた情報を参考にしながら,日本古典籍資料への新基準の適用時の基本的な課題をまとめ,今後テキストに反映していくための枠組みを整えることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で目指すスキル・レベルは基礎的なものと考えている。しかしながら,対象となる日本古典籍資料の分野や時代は極めて広く,そのすべてをカバーすることは難しい。そのため,各機関で所蔵・保存しているケースが多く,目録化が未達成な資料領域である近世の印刷資料を主な対象と考えて研究を進めている。平成25年度実施のワークショップ・プログラムの内容の改善と検証の一環として,関連対象資料群の研究成果が公開されている作品を対象に,書誌情報作成上の基本的スキルを各書誌要素(例えばタイトルや出版者に関する情報など)ごとに例示し,原資料を見る際のポイントや調べ方をなどの情報をさらに拡充することを考えている。また,現在まで採録できていない,日本古典籍資料の取り扱いに関する教材の作成を行いたい。 また,昨年度から始めている書誌データ採録の新基準への研究もさらに進める。すでに欧米の国で適用が始まった新基準の,日本古典籍資料への適用課題については,日本のみならず海外日本古典籍資料所蔵機関の目録担当者の関心は非常に高く,問い合わせもある。今後の研究を進め,この課題についての見解を示さなければならないと考えている。日本古典籍資料の実態に即して,有意な目録データとして提供・機能するために,新基準の基盤となる概念と資料実態との関連に関する研究を進める。そのために今年度行った基本的課題の考察をさらに進め,近現代刊行資料との基本的相異を前提に,現在提示されている個別適用規則の検証と実効性のあるルールを考究し,まとめることのできた箇所から順次国内外の研究者と情報を共有して検討を進める。 次年度は本研究計画の最終年度にあたり,当初想定した研究成果をさらに進めるためにも,人材育成と能力開発プログラムによる研修成果を,質保証の観点からも考察を行い,実効性あるものにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度予定した研究のうち,テキストをさらに充実するための一環として,日本古典籍資料取り扱いのための教材作成ができず,そのための人件費が残余となった。また,日本古典籍資料取り扱いに関する箇所が作成できなかったために,今年度も教材と記録の送付ができていない。なお,インターネットを通じて送付可能な記録の一部を主要参加者に個別に提供した。
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次年度使用額の使用計画 |
上記未完成の箇所を補充した上で,教材を早期に完成させて主要参加者に送付し感想を得ることとしたい。テキスト掲載教材の拡充をはかるため,国内所蔵機関に出向き資料確認の上,許諾を得てデータ収集を行う。 一昨年度から開始した,書誌データ採録のための新基準の日本古典籍資料への適応を考察するための情報収集と検討のため,国内外の研究者と意見交換を行う機会を積極的に設け,必要でオーサライズされた情報は可能な限りテキストに掲載することとしたい。
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