本研究は、情報通信技術を中心としたデジタル社会で活動する現代芸術家が作品の着想、先行研究のリサーチ、試作、実作業等を経て展示に至るまでの一連の活動をデジタルデータで記録・保存し、アーカイブとしての情報公開および教育的な活用までのモデル化を図ることを目的としている。 平成28年度は、前年からの課題であった電子メールデータ整理の追加作業を行った。これまでに、特定キーワードを用いてメールを機械的に分類後、目視による見出しの確認を行っていたが、より具体的な活動記録を取得するためには、内容を確認する必要があった。本作業後、昨年度から利用しているメールアーカイブシステムに、開発元が利用推奨する辞書データ(The Open American National Corpus:OANC)を実装してメール内容の分析・可視化をテストした。その結果、英文やラテン文字が含まれているメールは、送信元アドレスや送信者、関連人物等、OANCのコーパスに合わせて分類・分析できることを確認した。 一方、日本語の分析を行うには、OANCの形式に合わせて日本語データ作成してシステムに実装する必要があり、研究期間内に語彙データの作成は困難であったことから、システムに別途用意されていたカテゴリとキーとなる単語を手動で登録する方法を用いた。結果、システム上には日本語のコーパスが登録され、機能しているように見えたが、実際の分析では想定していた結果が得られないものとなった。 本研究では、6つのフェーズに分けて研究を進めてきたが、6番目のデータ公開およびアーカイブデータを利用した教育や芸術家支援の計画・立案は検討の範囲に留まった。計画が未達になかった要因のひとつには、資料のデジタル化とデータ整理に想定以上の期間を要した事が原因と考えている。
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